二分脊椎症者の装具の種類別歩行分析の試み

DOI
  • 信太 奈美
    首都大学東京健康福祉学部理学療法学科
  • 山田 拓実
    首都大学東京健康福祉学部理学療法学科
  • 清宮 清美
    埼玉県総合リハビリテーションセンター生活リハビリテーション担当
  • 坂田 清
    埼玉県総合リハビリテーションセンター福祉工学担当
  • 秋田 善行
    大宮義肢研究所
  • 小川 雄司
    埼玉県総合リハビリテーションセンター福祉工学担当

抄録

【目的】装具を使用して歩行を行っている二分脊椎症者は、学齢期を過ぎると生活環境の変化や活動範囲の拡大等に対応して装具を再検討することが多い。二分脊椎症者は、(1)下肢変形や体重増加(2)下肢の感覚障害における傷のリスク(3)装具の破損や耐久性の欠如等を考慮して装具を作成する必要があるものの、装具歩行の歩容に関する客観的なデータが少ないのが現状である。そこで今回は二分脊椎症者に対して装具を適切に処方するための客観的データを得る第一歩として、人の基本的かつ重要な動作である歩行動作に注目し、装具を変えることによる歩容の変化を運動学的に分析し比較検討を行った。<BR>【対象】装具を使用して歩行で生活をしている二分脊椎症者2名(被験者1:男性23歳、被験者2:女性19歳) を対象とした。Sharrardの分類は3で、公共交通機関で通勤し社会的役割がある。被験者1は屋内は装具を使用せず屋外は靴型AFOを使用、被験者2は被験者1と同様であるが勤務先ではHFG(High Flexfoot Gear、以下ファイナー)を使用していた。<BR>【方法】3次元動作解析装置VICON370(Vicon社製)と床反力計(kistler社製)を使用し、裸足、ファイナー、プラスチックAFO(以下SHB)、靴型AFOの4種類で歩行の分析を行った。装具はそれぞれに適合するよう採型して作成したものであり、被験者が日常で使っているものも含まれている。靴型AFOの継ぎ手は遊動式、ファイナーは既製のものよりも大きく下腿を覆うもの、SHBは厚さ3mm、背屈角度は1~2°であった。マーカーは臨床歩行分析研究会の推奨する15ヶ所とした。外果と第5中足骨底については装具を使用したときは装具の上につけなおした。危険のないよう自由歩行とした。この研究は埼玉県総合リハビリーテーションセンターと首都大学東京の倫理委員会の承認を得ている。<BR>【結果・考察】身体重心の上下方向の変位(cm)は被験者1:靴型AFO84.3±2.4、裸足83.0±1.6、SHB84.1±1.3、ファイナー85.3±1.1、被験者2は裸足68.2±1.5、ファイナー65.6±1.5、SHB68.2±1.4、靴型AFO70.0±1.1であった。装具歩行を歩容や運動効率から評価すると、重心の位置が高く動揺が少ない点で被験者1ではファイナー、被験者2では靴型AFOが適すると考えられた。しかし、身体重心の上下方向、左右方向の変位は同一被験者において装具による特徴があるものの、同一装具において被験者間の共通点は確認できなかった。また、歩行速度、歩行中の股関節、膝関節の可動範囲においても同様に共通点は認められなかった。このことから二分脊椎症者の歩行は装具によって変化し、個人によって得られる反応が異なるため個々に評価される必要があると示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), E0453-E0453, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566367872
  • NII論文ID
    130005014388
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.e0453.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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