リーチ動作における腹横筋・内腹斜筋収縮の機能評価

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  • リアルタイム超音波画像より(第3報)

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抄録

【はじめに】われわれは第1報で椅子坐位における体幹静止位での最大リーチにて,0.75kg以上の重錘挙上時に腹横筋の収縮が起こりやすいことを確認した。さらに第2報にて端坐位での最大リーチ位挙上動作(重錘負荷1kg)では腹横筋の収縮がおこり次いで内腹斜筋の収縮が起こることを確認した。今回、リアルタイム超音波画像を使用し坐位での1kg重錘挙上時の腹横筋と内腹斜筋の収縮様式の違いについて腰痛既往の有無での比較検討をおこなった.<BR>【対象と方法】対象は腰痛の既往歴がない健常成人13名(以下:既往無群)と過去5年以内に腰痛を訴えたことがある成人10名(以下:既往有群)の23名、年齢:28±3.2歳,身長:166.7±9.8cm,体重:58.7±9.8kg,上肢長:71.5±4.9cm.実施検査は開始時肢位を端坐位とし,右上肢を体幹前方に手掌を下にしてテーブル上に置いた.動作課題は体幹の回旋は行なわず,重錘負荷1.0kgを与えテーブル上から重錘挙上5cmを任意のスピードで行うこととした.挙上動作試行は2回とし,左腸骨稜上部に位置させた超音波診断装置(アロカ社製 SSD-5500)の深触子(7.5-10MHzリニア型)をおき,2回目の動作で超音波診断装置にて経時的変化を録画した.画像より腹横筋ならびに内腹斜筋の収縮を筋膜の動きおよび筋厚変化によって確認し,腹横筋と内腹斜筋の収縮開始の時間差(以下,時間差)を超音波診断装置のM modeの機能計測にて測定した.これらはインフォームドコンセントを得て実施した.<BR>【結果】既往無群においては腹横筋の収縮後に内腹斜筋の収縮が全例に認められたが、既往有群では10例中5例に認められた.残り5例においては内腹斜筋の収縮は認められなかった.収縮が認められた既往無群と既往有群には収縮の時間に有意な差は認められなかった.また時間差と年齢、体重、身長、BMI、上肢長においても相関は認められなかった.<BR>【考察】既往無群での端坐位での最大リーチ位挙上動作(重錘負荷1kg)では腹横筋の収縮後に内腹斜筋の収縮が起こるが、既往有群では半数が腹横筋の収縮がおこらなかった.腹横筋はローカル筋と呼ばれ体幹の分節的な安定性に大きく寄与しており,それに比し内腹斜筋はグローバル筋群のひとつであり脊椎保護や運動に関与するといわれている.今回の結果から重錘負荷での上肢挙上動作において健常成人は腹横筋の収縮がおこり体幹の安定性を得,その後内腹斜筋の収縮がおき運動を行なっていると推測されるが、既往がある成人においてはそれらの収縮がおこるものとおこりにくくなっているものの2種類が存在することが示唆された.今後,腰痛の既往がある被検者のデータ集積を継続して行ないリーチ動作における腹横筋および内腹斜筋の収縮の機能的変化を明確にしていくことが課題である.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), C1447-C1447, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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