呼吸筋力が運動耐容能に及ぼす影響

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【目的】呼吸筋は,持久力トレーニングを行った後,筋力低下を引き起こすことが報告されている.しかし,呼吸筋力と運動耐容能との関連性については明らかにされていない.そこで,呼気,吸気の呼吸筋力と運動耐容能との関連性について検討した.<BR><BR>【方法】対象者は,健常成人男性9名(平均年齢20.7±0.5歳)とした.対象者には,実験の趣旨を十分説明し,同意を得て行った.運動方法は,エルゴメーター(COMBI,AEROBIKE75XL2ME)を使用し,20W/minのRamp 負荷で行った.呼吸筋力の測定は,運動前後にスパイロメータ呼吸筋力測定ユニット(ミナト医科学,AS-507)を用いて,最大呼気の口腔内圧(PEMAX)と最大吸気の口腔内圧(PIMAX)を各10回測定し,その平均値を求めた.運動時の測定は、呼吸パラメータとして,呼気ガス分析装置(ミナト医科学,AE-300S)によるbreath by breath法を用いて,最大酸素摂取量を測定した.循環パラメータは,心電計(日本光電,ECG-9522)によりR-R間隔から心拍数を算出した.統計学的処理は,運動前後の呼吸筋力を比較するため,Wilcoxon符号付順位和検定を行い,運動前の呼吸筋力と最大負荷量,最大酸素摂取量との相関にはPearsonの相関係数を用いた.<BR><BR>【結果】呼吸筋力の平均値は,運動前,PEMAX182.1±11.2H2Ocm,PIMAX98.0±7.5H2Ocm,運動後,PEMAX160.5±11.3 H2Ocm,PIMAX93.0±9.0H2Ocmであった.最大負荷量の平均値は,191.9±20.8watt,最大酸素摂取量2483.9±271.0ml/minであった.そして,運動前の呼吸筋力と運動負荷量との相関では,PEMAX(r=0.78,P<0.01),PIMAX(r=0.67,P<0.05)共に高い相関が認められた.また,運動前の呼吸筋力と最大酸素摂取量についても,PEMAX(r=0.66,P<0.05),PIMAX(r=0.73,P<0.05)共に高い相関が認められた.運動前後の呼吸筋力の比較では,運動後のPEMAXに有意な低下(P<0.05)がみられ,PIMAXに差は認められなかった.<BR><BR>【考察】PEMAXとPIMAXは,最大負荷量と最大酸素摂取量に高い相関が認められた.また,運動後のPEMAXは,運動前に比べ有意な低下がみられ,運動前後のPIMAXには差はみられなかった.運動時の呼気筋の働きは,呼気量を増大させることで残気量が減少し,胸郭の弾性力を増加させた結果,受動的に行う吸気の割合を増加させる.また,横隔膜の拡張性が増すことで吸気が促されることなどが報告されている.以上のことから,呼吸筋力は,運動耐容能と関連していることが考えられ,特に呼気筋力は,吸気筋力よりも運動耐容能に影響することが示唆された.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566504576
  • NII Article ID
    130004580168
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p2142.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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