立位リズミックスタビリゼーション時抵抗力とプローブ反応時間について
説明
【目的】高齢者における転倒予防にはバランス機能の向上が重要である.バランス機能向上の手技として固有受容性神経筋促通法(Proprioceptive Neuromusclar Facilitation; PNF)の一つの手技であるリズミック・スタビリゼーション(Rhythmic Stabilization;RS)がある.プローブ反応時間(probe reaction time,以下P-RT)とは,ある連続活動(主課題)を遂行している時,単純反応時間課題(第2課題)をそこに加えた時の反応時間である.運動を扱う研究でP-RTは主課題に対する注意を鋭敏に反映するとされる.今回,立位RS時の抵抗力とプローブ反応時間との相関について検討することを目的とした.<BR>【方法】対象者は健常若年者7名(平均年齢23.1±3.39歳,男性6名,女性1名)を対象とした.全対象者に本研究の目的,方法を説明し,研究参加の同意を得たうえで実施した.<BR>単純課題は安静立位時単純反応時間(安静時RT)課題とRS時の最大抵抗課題である.また、二重課題として、立位RS時のP-RTである.測定項目は安静時RT、RS時P-RT、P-RT時抵抗力、最大抵抗力である.また、RTの差分(ΔRT= RS時RT-安静時P-RT)、最大抵抗力とP-RT時抵抗力との差分、最大抵抗力体重比(最大抵抗力/体重)、P-RT時RS抵抗力体重比(P-RT時RS抵抗力/体重)を求めた.反応時間測定の機器構成では,刺激装置はデジタルオーディオプレーヤ(Rio製)と録音装置はIDレコーダ(松下製)を使用した.DIGIONSOUND5サウンド処理ソフト(DIGION製)を用いてデータ分析を行った.抵抗力の測定は2つのハンドヘルドダイナモメータ(Hand Held Dynamometer;HDD)を験者の両手に装着し,HDDのテスター機能を用いて抵抗力のコントロールを行った.抵抗力は対象者の体幹動揺を出現しない最大抵抗である.統計処理:差の検定は対応のあるt検定を行った.相関は年齢を制御変数とした偏相関を用いた.なお,すべての統計解析にはSPSS12.0を用いて行った.<BR>【結果】安静時RT(276.7± 43.8msec)とRS時P-RT(360.0± 88.3msec)(p<0.05)、RS時抵抗力(6.6±1.2kg)と最大抵抗力(7.4±1.1kg)(p<0.01)、RS時抵抗力体重比(10.5±1.6%)と最大抵抗力体重比(11.8±1.2kg)(p<0.01)に差がみられた.相関について,ΔRTとRS時P-RTは0.96,ΔRTとRS抵抗力体重比は0.93(p<0.01),RS時P-RTとRS抵抗力体重比は0.82(p<0.05),有意な相関を認めた.安静時RTとRS時抵抗力,ΔRTの間に有意な相関が見られなかった.<BR>【考察】本研究では,安静時RTよりRS時P-RTの延長、最大抵抗力よりRS時抵抗力の低下、最大抵抗力体重比よりRS時抵抗力体重比の減少がみられた.二重課題の時にRTと抵抗力両方の低下がみられた.したがって、二重課題によりRSへの注意配分が少なくなったと考えられる.<BR>【まとめ】<BR> 立位安定性に影響する要因は体幹筋力だけでなく,注意も1つの影響因子であることが示唆された.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), A3P2046-A3P2046, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566588672
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- NII論文ID
- 130004580073
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可