膝前十字靭帯再建術後患者の入院期におけるバランス能力の検討
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【はじめに】近年、膝前十字靱帯(以下ACL)再建術後患者の入院期間は短縮化しつつあるが、術後早期におけるバランス能力に関する報告は少ない。そこで本研究は、入院期ACL再建患者のバランス能力を、術前と術後早期に分けて比較、検討した。さらに体重、患側の膝関節伸展制限角度および膝伸展筋力が、術後早期のバランス能力に与える影響について検討した。<BR><BR>【対象と方法】対象者は2007年5月から9月までに当院でSTG解剖学的2ルートACL再建術が施行され術後早期より理学療法を行った19例(男性11例、女性8例)で、平均年齢23.4±8.2歳、平均体重67.2±16.3kg、平均入院日数18.1±4.2日であった。方法は、バランス能力は術前と術後約10日目に、BIODEX社製stability system にてダイナミックバランステストを行い、傾斜動揺性の最も低いレベルで、開眼両脚立位にて20秒測定した。また、同日に患側の膝伸展角度を測定し、膝伸展筋力はCybex6000を用い座位膝屈曲70°にて等尺性筋力の最大トルク値を測定し、体重支持指数(以下WBI)を算出した。バランス能力を表す全方向安定指数(以下SI、SIは高値なほど動揺性が大きい)について、術前と術後の比較はT検定を用いた。バランス能力と体重、膝関節伸展制限角度および膝伸展筋力とのそれぞれの関係については、ピアソンの相関係数を用いた。統計学的有意水準は5%未満とした。<BR><BR>【結果】SIは術前2.30±1.05、術後1.67±0.91で有意差を認めた。患側の膝関節伸展角度は術前-1.05±4.59°、術後-3.42±3.75°で有意差を認めた。患側WBIは術前0.54±0.22、術後0.19±0.11で有意差を認めた。術前と術後のバランス能力と体重との間に有意な正の相関を認めた(術前r=0.76、術後r=0.76)。バランス能力と膝伸展制限角度との間に有意な相関を認めなかった。バランス能力と膝伸展筋力との間に有意な相関を認めなかった。<BR><BR>【考察】入院期ACL再建患者において、術後早期は膝関節伸展可動域、膝伸展筋力は術前よりも低下していたが、術後早期のバランス能力は術前と比較して有意に安定性が向上していた。バランス能力の向上には、各運動器の改善だけではなく神経運動器の協調性を高め、関節を動的に制御する機能が向上する必要がある。今回の研究にて、バランス能力と膝伸展可動域および膝伸展筋力との間に相関を認めなかったことから、術後のバランス能力の向上には術後の訓練プログラムにおける動的関節制動訓練の影響が大きく関与している可能性があり、今後はその有効性を明確にしていきたいと考える。体重の多い患者ほどバランス能力が低い傾向にあったことについては、体重を考慮に入れた訓練プログラムの設定や安全面への配慮が必要であると考えられる。<BR><BR><BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), C1354-C1354, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566620288
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- NII論文ID
- 110006800911
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可