立ち上がり動作での頭頸部の運動が体幹前傾に及ぼす影響

DOI

抄録

【目的】臨床で椅子からの立ち上がり動作(以下、STS)の獲得方法として、下肢筋力強化や体幹前傾運動に着目し指導することが多い.体幹前傾は、股関節を中心とした回転運動として捉えられることが多いが、頭頚部は10~15%の質量分布を有していること、股関節からのレバーアームが長いことからも頭頚部の運動は、STSでの体幹前傾運動に大きな影響を与えると考える.<BR>本研究では、STSでの頭頚部運動の影響による体幹の運動特性を明らかにすることを目的とする.<BR>【方法】事前に研究目的と安全性について十分な説明を行い、同意の得られた健常成人男性16例(年齢23.1±2.1歳、身長170.9±7.6cm、体重66.4±6.0kg)を対象とした.可変式の台上から視線は2~3m前方に向け、両上肢下垂位、両股関節内外転中間位、膝関節90°屈曲位、足関節中間位とした端坐位を開始肢位とした.計測に先立ち、自由速度でのSTSを指示し、動作に習熟するまで練習を行った.三次元座標は、三脚で固定したデジタルビデオカメラ4台でSTSを記録し、ビデオ動作解析システム(DKH社:Frame-DIASII ver.3.04)を用いて三次元化、座標を算出した.<BR>座標検出には、被検者に直径15mmの球形反射マーカーを眉間、後頭隆起、第7頚椎(以下、C7)、第3胸椎(以下、T3)、第7胸椎(以下、T7)、第12胸椎(以下、T12)、第3腰椎(以下、L3)、第2仙椎(以下、S2)の棘突起、上前腸骨棘(以下、ASIS)、および上後腸骨棘(以下、PSIS)に貼付した.空間座標データより矢状面での眉間・後頭隆起・C7のなす角から上位頚部角度を求めた.同様に後頭隆起・C7・T3のなす角から下位頚部角度、C7・T3・T7のなす角から上位胸部角度、T3・T7・T12から中位胸部角度、T7・T12・L3から下位胸部角度を求めた.T12・L3・S2から腰部角度を求めた.また、骨盤傾斜角度は、ASISとPSISを結ぶ線と水平面とのなす角度を求めた.<BR>動作パターンの分類には、我々の先行研究より、離殿時に下位頚部が屈曲する群8名(以下、P1)、下位頚部が伸展運動する群8名(以下、P2)に分け解析を行なった.<BR>【結果】P1では、動作開始直後に頭頸部は屈曲するが、離殿時には伸展運動しており、それに伴い、上・下部胸椎部の伸展運動が起こっていた.<BR>P2では、離殿にかけて徐々に屈曲運動していた.それに伴い、上・下部胸椎部は屈曲運動をしていた.<BR>【考察】P1においては、動作開始から離殿後まで頭部の自重、上部体幹の自重を順に利用し体幹前傾を生み、頭頚部、体幹、股関節伸筋群の遠心性収縮により運動を制御していると考えた.P2においては、動作開始に頚部、下部体幹屈筋群の求心性収縮により体幹前傾し、頭頚部、上部体幹伸筋群を順に求心性収縮することと股関節伸筋群の遠心性収縮により離殿前から体幹伸展方向への運動が起こる.これは頭頚部、上・下部体幹の分節運動が起こる為だと考えた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P2069-A3P2069, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566626560
  • NII論文ID
    130004580096
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p2069.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ