上肢協調性検査法の考案
書誌事項
- タイトル別名
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- ―簡易上肢機能検査(STEF)との比較による妥当性の検討―
説明
【目的】当院では,新たに上肢の協調性の障害を定量的に評価できる検査法を考案し,上田らのCoordination Testとの関係性の有無や,同一検者内や二検者間での検査結果の信頼性があるという事について報告を行ってきた.<BR>今回,考案した協調性検査法(以下,上肢協調性検査法)と現在一般的に上肢の機能検査に用いられる簡易上肢機能検査(以下,STEF)との相関関係を調査し,上肢協調性検査法の妥当性について検討を行ったので,報告する.<BR>【上肢協調性検査法】<BR>上肢協調性検査法は,A5版の紙面のほぼ中央に描いた直径25mmの円の中に,HBの鉛筆を用いて最大速度で点が重ならないように5秒間打点し,その打点数を合計するものである.姿勢は座位,前腕は机に着けずに行い,左右実施する.円の線外および線上に打点したものは数に含めず,また重なった点は1つにカウントする.完全に円の中に入っている点を有効打点数として採点する.<BR>1人の検者が上肢協調性検査法を17名の対象者に2回ずつ実施し,検者内相関係数ICC(1.1)は0.865~0.999であった.その1回目の検査結果を2人の検者で採点した検者間相関係数ICC(2.1)は,右0.978左0.948と高い相関関係があり,本検査法は信頼性が確認されている.<BR>【方法】検査協力の理解を得た高次脳機能障害のない脳卒中患者で,上肢協調性検査法とSTEFの両検査を実施した14名を対象に,後方視的に分析を行った.男性6名,女性8名で,麻痺側は右側6名,左側8名,年齢は平均69.8±15.5歳であった.発症から上肢協調性検査実施までの期間は平均61.8±25.9日,STEFは,上肢協調性検査の前後1週間以内に実施した結果のみを対象とした.<BR>上肢協調性検査やSTEFともに,検者と1対1の静かな環境で実施した.その麻痺側での検査結果について,相関係数を求めた.<BR>【結果】上肢協調性検査の結果は平均19.1±9.6点,STEFの結果は平均72.1±16.3点であった.その上肢協調性検査法とSTEFの結果の相関係数は0.742(p<0.001)であった.<BR>【考察】上肢協調性検査法は、一般的な上肢の機能検査法として知られるSTEFと高い相関関係が認められた.本検査法は,上肢機能を評価する一つの方法としての妥当性が認められた.<BR>協調性は上肢機能として求められる機能の一つである.上肢機能を多角的に評価するにあたり,協調性を客観的,定量的に評価できる検査法が求められる.この上肢協調性検査法は信頼性・妥当性もあり,上肢協調性の検査として有効と思われる.<BR>今後,経時的な変化をどのようにとらえることができるか,その可能性などについて検討していきたいと考えている.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), B2S2029-B2S2029, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566654336
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- NII論文ID
- 130004580364
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可