砂浜裸足歩行の動作筋電図評価

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抄録

【目的】理学療法における歩行練習において床面状態は考慮すべき項目であるが,一般に平地を用いて実施されている.その上で歩行時の応用性を向上させるために簡易なスポンジブロック等を使用することはあるが多くは障害物を超えるという運動スキルの向上を目的としている.一方で運動負荷としての歩行路状態の影響についての検証は数少ない.そこで不安定歩行路としての砂浜に着目し,下肢筋群への運動負荷の影響について検証した.<BR><BR>【方法】健常成人男性7名と女性6名を対象とした.なお,対象者全員に対し研究の主旨を説明し参加・協力の同意を得ている.実験は瀬戸内海に面した鷺島海岸で実施し,計測歩行路として,陸上平地と砂浜海側および岸側とした.陸上平地および砂浜では10m歩行を行なわせ,各条件3回ずつ計測を行なった.運動負荷量の計測として動作表面筋電計(Noraxon社製マイオリサーチXp)を用いた.また,歩行周期の確認のため,デジタルビデオ(DV)による動画も同期計測した.得られた筋電波形の解析では3歩行周期を平均化し,RMS処理を行い,%MMTを用いて3条件での比較を行った.なお,計測対象となる下肢はすべて右下肢とし,対象筋は,前脛骨筋,腓腹筋,大腿直筋,外側広筋,大腿二頭筋,中殿筋,母趾外転筋の7項目とした.計測結果の統計検定では,一元配置の分散分析および多重比較を行った.<BR><BR>【結果】有意差を認めたのは半腱様筋における海側砂浜と陸上との間のみであった.全体的には岸側砂浜>海側砂浜>陸上の順で筋活動が高い傾向を示した.なお,今回有意差は認めなかったが母指外転筋において前述した傾向が最も強かった.<BR><BR>【考察】筋電図波形では砂浜歩行について歩容にばらつきが多く,砂浜という特殊な立地条件ではバランスを保つスキルにおいて個々の能力が大きく異なることが考えられた.つまり定性歩行には至らなかったケースがほとんどであった.その定性歩行にいたらない特殊な状況においてハムストリングによる緩衝作用としての役割が大きかったと考えられる.砂浜での歩行では足指の筋である拇指外転筋の活動が他に比べ大きく,立地時の特異な負荷がうかがえる.通常、不安定な地面において正中位を保とうとする場合,重心は前足部に移行し足指による補正が求められることから同じ現象が砂浜での歩行において負荷として生じていると考えられる.<BR><BR>【まとめ】本実験結果からいわゆる平地歩行とは異なる砂浜歩行の特異な運動負荷(筋活動)が確認された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0443-A0443, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566662400
  • NII論文ID
    130005014776
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a0443.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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