立位方向転換ステップの動作解析
書誌事項
- タイトル別名
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- 移乗動作自立度の違いによる比較
説明
【目的】移乗動作には身体の向きを変えるという大きな特徴があるが、脳血管障害患者では方向転換が困難であることが多い。本研究では方向転換でのステップ動作に着目し、移乗動作自立者および非自立者の比較検討を行い、参考データとして健常者の計測も行った。<BR>【対象・方法】対象は実用移動が車椅子移動である脳血管障害患者2名(症例A・左片麻痺・女性・69歳・移乗動作自立、症例B・左片麻痺・女性・60歳・移乗動作監視)、健常者1名(女性・70歳)。計測は三次元動作解析装置VICON MX13と床反力計3枚を使用し、マーカーは13個貼付した。計測動作は静止立位から非麻痺側下肢を右斜め前方にステップしながら90°の方向転換を行う健側回りの動作とした。パラメーターは (1)COG・COP軌跡、(2)下肢関節モーメント(以下、MO)、(3)下肢関節角度、(4)ステップ側接地までの骨盤回旋角度を算出した。<BR>【結果】 (1)COG軌跡は症例A・健常者で、支持脚方向へ移動しながら緩やかなカーブを描き、ステップ側へ大きく移動していく軌跡であった。症例Bでも類似した軌跡が見られたが、初期からCOG位置がステップ側へ大きく偏位しており、ステップ時に支持脚まで移動することはなかった。COPはCOGが支持脚へ動き始める時期に、一度ステップ側へ移動する逆応答反応が健常者・症例Aでは見られたが、症例Bでは見られなかった。そこで、逆応答反応期間で(2)・(3)を抽出した。(2) 3名共に右股関節外転MOが増加し、症例A・健常者は左股関節外転MOの減少、症例Cは左股関節内転MOが増加した。(3)3名共に右股関節外転角度が増加し、左股関節内転角度は増加した。(4)骨盤の右回旋はCOGの支持脚への移動と同時に開始され、変化量は症例A24.7°、症例B12.4°、健常者35.5°であった。(2)・(3)の値について症例Bが最も左右差が大きく、右股関節外転MOや内転角度が高値を示した。<BR>【考察】逆応答反応は前後方向で起こらず左右方向でのみみられた。これは方向転換開始時にCOGの前進よりも側方移動が重要であり、同時期に骨盤の右回旋が起こっていることから、側方制御を骨盤の回旋により、斜め方向制御へと変更させているとことが示唆された。結果、症例Bでは側方制御が行えていないことで骨盤回旋角度の変化量が最も低値を示した。支持脚へCOGを押し出す股関節内外転MOは健常者・症例Aと同様な波形パターンを示すものの、初期よりCOG・COPがステップ側へ偏位している上に、右股関節内転角度が大きいため、それ以上に右側方へCOPを移動することが行えず、COGを支持脚へ押し出すための回転MOを発生させることが困難であったと考えられる。今回は方向転換ステップ初期では側方制御が重要であり、それには両側股関節の協調的な働きが必要であると示唆されたたが、今後は症例数を重ねていくとともに、前後・側方ステップとの関連性も検討して行きたい。 <BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), A0436-A0436, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566676608
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- NII論文ID
- 130005014769
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可