大腿二頭筋の収縮時および伸張時の筋硬度と筋厚の変化について
説明
【目的】臨床において、筋が収縮あるいは伸張したときに筋の形態やスティフネスがどのように変化するのかを理解しておくことが重要である.本研究の目的は若年者の大腿二頭筋を収縮および伸張させたときの筋硬度と筋厚の変化を明らかにすること、およびその筋硬度や筋厚の変化の程度と筋の伸張性との関連性について明らかにすることである.<BR>【方法】対象は健常若年者18名(男性14名、女性4名、年齢22.1±1.8歳)とした.対象者には本研究の目的を説明し、同意を得た.<BR> 筋硬度計(NTI製マイオトノメーター)を用いて右側の大腿二頭筋を2.0kgの圧迫力で押したときにプローブが貫入した移動距離(筋硬度値)を測定し、3回測定した値の平均値をデータとして用いた.また、超音波診断装置を用いて右側の大腿二頭筋長頭の筋厚を測定した.筋硬度および筋厚は股・膝関節伸展位での安静時、股・膝関節伸展位で股関節伸展の最大等尺性収縮をさせた条件(収縮時)、および膝伸展位で股関節20・40・60・80度屈曲させた条件(伸張時)でそれぞれ測定した.なお、筋厚および筋硬度は坐骨から脛骨外側顆を結ぶ線の1/2の部位で測定した.さらに、大腿二頭筋長頭の伸張性として、膝伸展位での他動的な股関節最大屈曲角度(SLR角度)を測定した.<BR> 筋硬度および筋厚について、安静時と収縮時の違いについては対応のあるt検定、安静時と各股関節屈曲角度での伸張時の違いについては一元配置分散分析および多重比較によって分析した.また、安静時に対する収縮時および伸張時の変化率を求め、これらと筋の伸張性(SLR角度)との関係性について分析するため、pearsonの相関係数を算出した.なお、伸張時の変化率については股関節80度屈曲位の値を用いた.<BR>【結果と考察】大腿二頭筋の筋硬度値は安静時で13.8mm、収縮時で12.7mm、伸張時で12.7~14.2mmであり、安静時と比較して、収縮時および伸張時ともに有意な変化はみられなかった.一方、大腿二頭筋の筋厚は安静時で41.3mm、収縮時で40.5mm、伸張時で32.2~36.2mmであり、安静時と収縮時との間には有意な違いはみられなかったが、伸張時ではすべての股関節屈曲角度において安静時よりも有意に低い値を示した.伸張時における各股関節屈曲角度間では筋厚の有意な違いはみられなかった.これらのことより、大腿二頭筋は収縮させても筋硬度や筋厚は変化しないが、伸張させると筋厚は薄く変化することが示された.<BR> SLR角度と筋硬度および筋厚の変化率との関連については、SLR角度と筋硬度の変化率との間には相関がみられなかったが、筋厚の変化率との間には、収縮時(r=0.51)および伸張時(r=0.59)ともに有意な相関がみられた.このことから、大腿二頭筋を収縮および伸張させたときの筋厚の変化の様相は筋の伸張性の影響を受けることが示唆された.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), A3P3168-A3P3168, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566685568
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- NII論文ID
- 130004580354
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可