地域在住高齢者における慢性閉塞性肺疾患の実態調査

DOI

この論文をさがす

抄録

【目的】慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive Lung Disease,以下COPD)は国際的に増加傾向にあり,さらに喫煙により閉塞性換気障害が慢性的に進行していく疾患である.Global initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(以下,GOLD)が発表した最新のCOPD国際ガイドラインでは閉塞性換気障害がなくとも慢性の咳,痰を有するものは STAGE 0 (COPD 予備群)とし,予防の重要性に警鐘を鳴らした。本邦の場合,COPD患者は530万人と推定されているが,実際に医療機関にて治療を受けている患者数はわずか21万人である.医療機関にて治療を受けているCOPD 患者のほとんどが,STAGE 3~4(sever GOLD stage, profound GOLD stage)の病態が悪化した患者層であり,COPDのSTAGE 0~2(At Risk, mild GOLD stage, moderate GOLD stage)の患者層の多くは医療機関を受診していない。そのため初期治療を実施できず,気付かないうちに重症化していくという問題がある.本研究では地域在住高齢者を対象に肺機能検査を行い,潜在性のCOPD予備群ならびに軽・中等度群の実態調査を横断的に行った.<BR><BR>【方法】対象は,本研究に同意が得られた阿見町在住の地域高齢者66名のボランティア参加者であった.対象者の内訳は,66名(男性29名,女性37名),平均年齢73.8±10.4歳,平均身長153.0±15.5cm,平均体重55.0±9.2kgであった.測定項目は,問診による労作時呼吸困難と慢性的な咳・痰の有無,喫煙歴,スパイロメーターを用いた肺機能検査(%VC,%FEV1.0,FEV1.0%)とした.なお検査はディスポーザブル・フィルターを使用して感染対策に配慮し,対象者には書面をもって十分な説明と同意を得た(茨城県立医療大学倫理委員会承認「地域高齢者を中心とした呼吸機能の実態調査」H.17 No.203)。<BR><BR>【結果】正常な肺機能を有する対象者は全体の56.0%(37名), GOLD stage 0(At risk)の対象者は全体の16.6%(11名),GOLD stage 1の対象者は全体の22.7%(15名), GOLD stage 2の対象者は全体の3.0%(2名), GOLD stage 3の対象者は全体の1.5%(1名), GOLD stage 4の対象者は全体の0%(0名)であった。従って、地域在住高齢者の43.9%(29名)の方はCOPD予備群または明らかなCOPD障害を有していた.特に閉塞性換気障害と判断されるFEV1.0%が70%以下の対象者は,全体の28.8%(19名)にも及んでいた.<BR><BR>【考察】通常の生活を行っている地域在住高齢者において,約半数の方々がGOLD判定のat riskを含むCOPDの域にあり,4人に1人は軽~最重症までの明らかなCOPDであると推定できた。COPDは進行性疾患であるため,我々は地域在住の高齢者に対して,呼吸リハビリテーションを含めた治療を早期に介入する必要があると考えられた.<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), D0840-D0840, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ