ファンクショナルリーチ・テストにおけるリーチ距離と動作戦略に関する検討

  • 米田 浩久
    関西医療大学 保健医療学部 臨床理学療法学教室
  • 高崎 恭輔
    関西医療大学 保健医療学部 臨床理学療法学教室
  • 谷埜 予士次
    関西医療大学 保健医療学部 臨床理学療法学教室
  • 鈴木 俊明
    関西医療大学 保健医療学部 臨床理学療法学教室

説明

【目的】ファンクショナルリーチ・テスト(以下、FRTという)は、随意運動中のバランス機能検査として日常の臨床において頻繁に用いられている検査法である.この理由として、諸家らの報告にあるように姿勢調節や転倒要因とFRTのリーチ距離に高い相関があることが挙げられる.一方で、正常動作を基に動作改善を図る我々理学療法士にとって、FRTをおこなう際の動作戦略の把握が重要ではないかと考えるが、リーチ距離と動作戦略の関係について検討している報告はない.そこで今回、健常者を対象にFRTを実施しリーチ距離と実施中の動作戦略について検討を行ったので報告する.<BR><BR>【方法】同意を得た健常大学生83名(男性46名、女性37名)に対してDuncanの方法に則り、FRTを1人当たり3回実施した.リーチ距離はメジャーにて計測し、側方4mからデジタルビデオカメラにて定点撮影した動画によって計測中の動作戦略を同定した.得られた全252試行のなかから上位4パターンの動作戦略を示した240試行を対象に、各動作戦略とリーチ距離との関係をKruskal-Wallis検定を用いて群間分布差を比較すると同時にBonferroniとScheffeの方法により対比較を検討した.なお、今回のFRTによって得られた上位4パターンの動作戦略と該当試行数は次の通りであった.1)股関節屈曲のみのパターン(該当試行数106)、2)足関節背屈の後に股関節屈曲するパターン(同93)、3)股関節屈曲の後に足関節底屈による膝過伸展を示すパターン(同27)、4)足関節背屈のみのパターン(同14).<BR><BR>【結果】リーチ距離(mean±S.D.)は、1)35.8±6.9cm、2)36.4±7.0cm、3)32.7±7.4cm、4)24.8±4.8cmであった.リーチ距離に対する統計学的検討の結果、1)から3)の各パターン間では対比較に有意差はなかったが、1)から3)の各パターンと4)の間に有意差(1‐4:p<0.01、2‐4:P<0.01、3‐4:P<0.05)を認めた.<BR><BR>【考察とまとめ】以上から、4)では他のパターンに比べリーチ距離が有意に減少した.この理由として4)では足圧中心の前方移動量が大きくなるが、課題を遂行するためにリーチ距離が抑制されたと考える.次に、リーチ距離の増大には、1)から3)の動作戦略が用いられたが、これらの間に有意差は認められず、リーチ距離増大に関する特徴的な動作戦略は確認できなかった.しかし、鈴木らはスモン患者のFRTの結果として、歩行動作能力はリーチ距離だけではなくリーチ戦略方法が重要であると報告している.つまり、動作改善を目的にFRTを用いる際にはリーチ距離だけではなく、やはり動作戦略の解明が重要と思われ、今後は1)から3)の動作戦略に対する個体内と個体間の要因分析を進め、当該戦略を取りうる原因を究明したいと考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P2095-A3P2095, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566699520
  • NII論文ID
    130004580122
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p2095.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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