健常者における年齢別のFour Square Step Test(FSST)の有用性について
説明
【目的】Four Square Step Test(以下, FSST)は2002年にDiteらにより考案されたバランスの測定法である.この信頼性と妥当性は既に評価されており,臨床的に有用とされている.しかし,健常成人における年齢別の測定値やその有用性は報告されていない.そこで,今回,健常成人におけるFSSTとTimed“up & go”test(以下, TUG),歩行動作,下肢筋力,片脚立位動作との関連を調べること,また,年齢別のFSSTの差を調べることを目的として研究を行った.<BR>【対象】屋外歩行自立レベルの健常成人で,20~70代各10名ずつ計60名とした.参加者には事前の文書によって調査の趣旨を説明し、参加の同意を得た.<BR>【方法】FSST,TUG,最大歩行速度,膝伸展筋力,片脚立位時間を測定した.FSSTは4本の杖を十字に並べて4区画にわけ,左手前の区画から時計回りに1周した後続けて反時計回りに1周する課題で,参加者には杖に触れないよう,できるだけ前を向いて素早く移動する事を要求した.計測は検者の合図から最後に足が接地するまでとした.TUGは検者の合図で高さ42 cmの椅子坐位から起立, 3m歩行, 180°方向転換,再度3m歩行,着坐の一連動作を測定した.歩行速度は16mの中間10mを測定した.FSST,TUG,歩行速度は2回測定し,最速値を採用した.膝伸展筋力は坐位姿勢でhand-held Dynamometerを用いて左右2回ずつ測定し,最高値を採用した.片脚立位は開眼で両側2回ずつ測定し,最高値を採用した.両手を腰に当て,できる限り長く保持してもらい,上限は180秒とした.統計学的分析として,年代別・60名全体での各測定値の相関関係はピアソンの相関係数を用いて調べ,年代別のFSST値は一元配置分散分析を用いて有意差の有無を調べた.なお、有意水準は5%未満とした.<BR>【結果・考察】FSSTの平均測定値は20代5.2±0.7秒,30代5.5±0.8秒,40代6.4±0.9秒,50代6.8±0.7秒,60代7.5±1.4秒,70代8.0±1.3秒で年齢とともに減速し,p<0.05で有意差が見られた.TUG(5.1~7.1秒),歩行速度(3.5~5.5秒),筋力(44.1~26.7kg)も同様に年齢とともに減速,減弱した.FSSTとTUGとの間の相関係数は20代r=0.77,30代r=0.83,40代r=0.75,50代r=0.37,60代r=0.77,70代r=0.52であり,20~40,60代でp<0.05で有意な相関があった.FSSTと歩行速度ではr=0.24~0.75,FSSTと筋力ではr=-0.03~-0.89,FSSTと片脚立位ではr=-0.04~-0.89であり年代によりばらつきがみられた.60名全体の相関係数はFSSTとTUGとでr=0.84,歩行速度とでr=0.78,筋力とでr=-0.62,片脚立位とでr=-0.65でありp<0.05で有意な相関が認められた.以上より,FSSTはバランス測定に有用であると考えられ,今回の結果は健常者以外のFSST測定の参考になると考えられる.
収録刊行物
-
- 理学療法学Supplement
-
理学療法学Supplement 2008 (0), A3P3137-A3P3137, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205566760064
-
- NII論文ID
- 130004580327
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可