リーチ動作を反復した時の姿勢制御の学習による変化

DOI
  • 齊藤 展士
    北海道大学 大学院保健科学研究院 機能回復学分野
  • 福島 順子
    北海道大学 大学院保健科学研究院 機能回復学分野
  • 山中 正紀
    北海道大学 大学院保健科学研究院 機能回復学分野
  • 武田 直樹
    北海道大学 大学院保健科学研究院 機能回復学分野
  • 岡田 陽子
    北海道大学 医学部保健学科 理学療法学専攻
  • 今泉 有美子
    北海道大学 医学部保健学科 理学療法学専攻

抄録

【目的】一般に,同じ運動を反復することでそのパフォーマンスが向上することはよく知られている.我々,理学療法士も患者に動作を何度も反復して行わせることで,その動作能力の向上を目指す.立位から全身を用いるリーチ動作においても,反復によりパフォーマンスが向上することは知られており,正確で素早いリーチ動作には,より適切な推進力や制動力が必要になる.その推進力や制動力は姿勢筋の活動により得られるが,反復により姿勢制御にどのような変化が生じるのかはよくわかっていない.よって,今回,リーチ動作の反復による姿勢筋活動の変化を調べた.また,その変化が一時的な適応性変化なのか,学習による効果なのかを調べた.<BR><BR>【方法】対象者は右利きの健常成人15名とした.ヘルシンキ宣言に沿い,対象者には必ず事前に研究趣旨を文書および口頭で十分説明し,書面にて同意を得た.10名の被験者は床反力計の上で静止立位を保ち,音刺激後,右手指をできるだけ素早く肩の高さに位置する直径2cmの目標物にリーチを行った.目標物までの距離は,全身を用いたリーチ動作を行うことが可能な最大距離とした.リーチ動作は休憩を取りつつ50回反復して行った.また,身体各部位に反射マーカーを取りつけ3次元動作解析機により各セグメントの位置や関節角度,体重心の変位を求めた.左右の前脛骨筋,腓腹筋,大腿直筋,大腿二頭筋から筋活動を記録した.予測的な姿勢筋活動の開始時間からリーチ動作開始時間である右手部の動き出し時間までを準備相,リーチ動作開始時間から右手の加速度が最大になる時間までを推進相,右手の速度が最大になった時間からリーチ終了時間までを制動相とし,各相での筋活動量を求めた.5名の被験者にはリーチ動作を100回行わせ,同様の手法で3日続けて記録した後,休息を1日取り,その翌日,再度,記録した.リーチ動作の10回毎の平均値を算出し,反復による姿勢筋活動の変化を比較した.また,初日と2-4日目のデータを比較し,学習効果を調べた.<BR><BR>【結果】リーチ動作を反復することでパフォーマンス(正確性,運動時間,最大速度)は向上し,準備相での予測的な前脛骨筋の筋活動量は有意に増大した.推進相でも前脛骨筋の筋活動量は有意に増大し,制御相では腓腹筋の活動量が有意に増大した.パフォーマンスや姿勢筋の筋活動量の変化は,2日目以降も持続し,休息を1日取った後にもその効果は持続した.<BR><BR>【考察】これらの結果から,準備相と推進相での前脛骨筋の筋活動量増大がリーチ動作の最大速度の増大に影響し,制御相での腓腹筋の筋活動量増大により適切なブレーキングが可能になったと考えられる.<BR><BR>【まとめ】リーチ動作の反復により姿勢制御は変化した.その変化は一時的な適応性変化ではなく,長期増強などによる学習による効果である可能性が示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P2122-A3P2122, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566774016
  • NII論文ID
    130004580148
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p2122.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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