腹筋運動における上部腹直筋・中部腹直筋・下部腹直筋の筋収縮特性

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • 体幹屈曲角度の違いによる変化

この論文をさがす

抄録

【目的】腹筋群の強化は,様々な疾患に対し運動療法の一部として実施されていることが多い。中でも腹直筋は,起き上がり,寝返り,歩行などの基本動作時に大切な働きを担っている。本研究では,「腹筋運動」いわゆる「腹筋を使った起き上がり」を3つに区切ったものを各課題とし,上部・中部・下部腹直筋がどのように働いているか筋電図学的に分析し比較検討することを目的とし,若干の考察を加え報告する。<BR>【方法】対象は,健常成人男性11名(年齢23.3±6.0歳,身長170.3±4.5cm,体重62.5±6.6kg,BMI21.5±1.9kg/m 2)とした。腹筋運動を,課題A:背臥位から頸部を屈曲させ床から離れるところで保持,課題B:肩甲骨下角が床から離れるところで保持,課題C:第4腰椎が床から離れるところで保持,の3課題に分け,各課題時に表面筋電図を測定した。導出筋は右側の上部腹直筋,中部腹直筋,下部腹直筋とした。電極貼付部位は,上部腹直筋が臍より5cm上方で白線より3cm外側,中部が臍の高さで白線より外側3cm,下部が臍より5cm下方で白線より3cm外側とした。筋電計はMyoSystem1200のMyoResarch2.02を用いた。表面筋電図信号はA/D変換しコンピュータに取り込み,積分値(IEMG)を求めた。はじめに上部と中部,下部腹直筋の最大等尺性収縮(MVC)を5秒間施行し,同時に筋電図を記録した。次に各課題時に得られた腹直筋筋電図のIEMGをMVCの積分値で補正した相対値(%MVC)を算出して腹直筋の上部・中部・下部の値を比較検討した。また,各筋に分け課題間の比較も行なった。統計学的処理にはSPSS13.0 for Windowsを用い Tukeyの多重比較を行なった。有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】各腹直筋の%MVCは課題Aで最も低い値であり,課題B,Cと増大する傾向が見られた。但し上部腹直筋に関しては,課題BとCの間に有意な差は認められなかった。また,課題Cで下部腹直筋は上部腹直筋に比べて有意に高い値を示した。<BR>【考察】課題Aより順次%MVCが増加していくのは,運動軸が頭側から尾側に移動し離床部分が多くなり腹直筋にかかる負荷量が増大した事が原因として考えられた。また,課題Aで%MVCが低い値となったのは,頭部を離床させる時,主に胸鎖乳突筋が働き,腹直筋は胸郭の固定に働いたためと考えられた。最後に上部腹直筋は課題BとCで大きな変化がなかったこと,課題Cで下部腹直筋が上部腹直筋に対し有意に高くなったことは,腱画に区切られている腹直筋が一様な収縮をしないことを示唆した。<BR>【まとめ】各腹直筋の働きは異なり,その要因を解明していくことでより効果的な筋力増強が可能になる。また,効果的な起き上がりなど基本的動作訓練が行えると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0214-A0214, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ