下肢切断後,義足歩行能力を獲得した非対称性二重体の一症例

DOI
  • 天尾 理恵
    東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 横田 一彦
    東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 芳賀 信彦
    東京大学医学部附属病院リハビリテーション部

書誌事項

タイトル別名
  • 理学療法経過と運動の獲得

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抄録

【はじめに】小児切断は切断全体の2~4%と稀であり、その理学療法(PT)報告も少ない。今回、先天性奇形を有した非対称性二重体の症例に対し、乳児期から介入する機会を得た。成長を考慮した治療経過に準じ、発達に合わせたPT実施と義足装着による歩行獲得までの経過、及びポイントとなった点について以下に報告する。<BR>【症例】出生前診断されず骨盤位のため帝王切開で他院にて出生。生後四肢奇形(下肢3肢、重複足)・寄生体(無心無頭体、上腹部遺残上肢、肝・腎・膀胱・腸管)を認め当院NICUに搬送。生後1ヶ月時、余剰下肢切断・遺残上肢切断術施行、生後2ヶ月時、寄生体肝小腸切除し生後4ヶ月で自宅退院。9ヶ月時、右足部形成術施行。2006年11月(4歳)、右大腿骨骨切り・右膝離断術施行。<BR>【PT評価とプログラム】<生後4ヶ月>余剰下肢・遺残上肢切断後に介入。右下肢は骨盤に対し90度回旋、膝関節屈曲・足関節拘縮を認めたが、股関節伸展・外転方向、膝関節屈曲、足趾屈伸運動可能、その他残存肢の運動は良好であった。ROM Ex及び運動発達の促しを中心にPT実施。右下肢奇形・骨盤内臓器の問題に伴う腹部膨瘤により、寝返り・坐位・腹臥位での移動の発達に遅延を認めたが、8ヶ月で寝返り、10ヶ月で坐位保持・腹臥位での後方ずり這い、11ヶ月左下肢つかまり立ち、12ヶ月で3肢でのハイハイ、以降、胡座位での移動、左片脚での伝い歩きが可能となった。移動時には、右膝の屈伸、股関節伸展方向への運動により推進力を得ていた。<4歳>右大腿骨骨切り・右膝関節離断術後第16病日、ソフトドレッシング下にEx開始。股関節屈曲・内転に制限を認めたが、各運動方向への自動運動は可能、更なる股関節屈曲運動の獲得、左下肢機能維持目的にPT実施。骨切り部の癒合やROM改善にあわせ、坐位Ex、断端への荷重Exへと段階的にプログラムを進行した。骨形成が順調に進み、術後2ヶ月で義足作製開始、2.5ヶ月後より義足装着でのEx開始。義足装着後約3週(術後3ヶ月)で独歩可能となった。<BR>【考察】小児切断は成人と異なり、歩行の経験がないままの義足装着となるため、装着後のボディーイメージの構築、義足の受容、運動の獲得が課題となる。本症例は早期に義足装着にて独歩能力を獲得した。その要因として、1)切断以前においても身体機能を十分に活かした運動発達を認めていたこと、2)同年代の切断患者との交流の機会をもて、患児・家族ともにイメージの構築、十分な義足の受け入れが行えていたこと、3)装着後、新たな下肢運動や歩行Exを積極的に実施し、運動経験を積むことができたこと、が考えられる。今後も成長に合わせ、義足の調整、運動評価・指導を行っていきたいと考えている。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0506-A0506, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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