斜面上でのスクワットが下肢筋活動に及ぼす影響

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抄録

【目的】 斜面上での遠心性スクワット動作は、ジャンパー膝の運動療法に推奨されている。しかし斜面上スクワット中における下肢筋活動、膝関節モーメント、体幹及び下肢関節角度の変化が明確になっていない。また斜面上スクワット中の足圧中心の変化に関しての報告は少ない。本研究の目的は、下肢筋活動、膝関節モーメント、関節角度、足圧中心の動揺を斜面上及び平地上遠心性スクワット間で比較検討することである。<BR>【方法】 対象は同意の得られた本学学生16名(男性8名、女性8名、平均年齢21.7±1.2歳、身長165.5±9.3cm、体重59.0±6.2kg)とした。測定方法は、胸の前で腕を組んだ静止立位姿勢から3秒間かけて膝関節屈曲90度肢位までスクワットを行う課題を平地上と25度前方に傾斜した斜面台上で施行した。下肢表面筋電図は表面電極を大腿直筋、内・外側広筋、内・外側ハムストリングス、前脛骨筋、腓腹筋内側頭の筋腹中央に貼付し、スクワット動作3秒間の筋電位をサンプリング周波数1kHzで導出した。関節角度と膝関節モーメントは三次元動作解析装置(VICON370)と床反力計を使用し計測した。足圧中心の動揺はアニマ社製重心動揺計(G-6100)を使用し、スクワット動作開始から終了肢位までのデータをサンプリング周波数200Hzで導出した。データ処理は、三次元動作解析装置から膝関節屈曲40度、60度、80度に達する前後65msecの合計130msecのデータを解析対象とし、膝関節屈曲角度毎に積分筋電図(IEMG)、膝関節モーメント、体幹前傾角度及び下肢関節角度を求めた。なおスクワット時のIEMGは静止立位のIEMGを1として正規化した。足圧中心データからは、スクワット動作開始から膝関節屈曲80度肢位までの総軌跡長を求めた。有意差検定は対応のあるt検定を用い、有意水準5%とした。<BR>【結果】 平地上と比較して斜面上スクワット時の下肢筋活動が、外側広筋は膝関節屈曲80度で有意に増加し、前脛骨筋は全ての膝関節角度で有意に低下した。膝関節伸展モーメントは膝関節屈曲80度において斜面上スクワットで有意に増加した。下肢関節角度は、股関節角度及び足関節角度において斜面上と平地上で角度変化に差が見られなかった。体幹前傾角度は斜面上で体幹前傾角度が小さくなった。足圧中心の総軌跡長は斜面上スクワットで有意に増加した。<BR>【考察】 平地上スクワットは後方転倒を防ぐために体幹の前傾や前脛骨筋の筋活動によって動作姿勢を保持しており、一方斜面上スクワットは身体の前方傾斜によって、体幹前傾や前脛骨筋による姿勢保持機能が抑制されていると考える。そのため斜面上では平地上よりも重心を後方に位置でき、その分膝関節伸展モーメントが大きくなることで膝関節伸展筋の筋活動が高まると考えられた。以上より斜面上スクワットは平地上と比べて膝伸展筋を強化するには有効な手段と考えられた。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0513-A0513, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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