肩甲上腕関節可動域と肩甲骨の代償動作との関連性

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  • 結帯動作時の肩甲骨の動きの類型化

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抄録

【目的】肩甲上腕関節と肩甲骨の動きの協調性に関する報告はあるが、日常生活動作に関する肩甲骨の動きや動きのバリエーションについての報告は少ない。そこで今回、結帯動作に着目し、肩関節第2肢位内旋可動域(以下第2内旋ROM)と前額面での肩甲骨の動きの関連性について類型化し評価の指標とすることを目的とした。<BR>【方法】対象は肩関節に障害の無い成人男性21名(26.9±3.8歳)、42肩とした。検討項目は安静肢位から結帯肢位での肩甲骨の移動量として肩甲骨挙上下制角(以下挙上角)、上方下方回旋角(以下回旋角)、内外転距離(以下外転距離)の3項目と、さらに第2内旋ROMの計4項目とした。安静肢位は立位にて上肢体側下垂位にてリラックスした肢位とし、結帯肢位は同じく立位にて第3中手骨を胸椎12棘突起にあて、肘頭を矢状面の重心線に合わせた肢位とした。それぞれの肢位で肩甲骨の肩甲棘根部、肩甲骨下角、第3胸椎棘突起(以下Th3)、第7胸椎棘突起(以下Th7)、肩峰角にマーカーを貼布し、三脚にて固定したデジタルカメラにて撮影した。撮影した画像を画像解析ソフトScion imageにて測定した。挙上角はTh3を通る脊椎線(Th3とTh7を結ぶ線)との垂直線およびTh3から肩甲棘根部のなす角度、回旋角は脊椎線と肩甲棘根部と下角を結ぶ線のなす角度、外転距離はDiVeta(1990)らの方法を一部改変した方法を用い、脊椎線から肩甲棘根部までの最短距離を、肩甲棘根部から肩峰角までの距離で除した値を変数とした。第2内旋ROMは背臥位にて肩甲骨をベッドに固定した状態で5°刻みで測定し、2回測定した平均値を変数とした。統計解析は4項目を変数としてクラスター分析を行い、3群(A群、B群、C群)に分類した後、3群間で4項目についてKruskal-Wallis検定とMann-Whitney検定を行った。<BR>【結果】クラスター分析により分類された3群はA群12肩、B群21肩、C群9肩となった。第2内旋ROMはA群47.0±5.9°、B群37.3±8.7°、C群27.2±7.0°で3群間に有意差が認められ、挙上角はA群5.5±3.8°、B群5.9±4.7°、C群17.0±10.3°でC群が他群より有意に挙上し、外転距離はA群-0.9±6.0、B群13.7±7.0、C群-1.7±7.8でB群が他群より有意に外転していた。回旋角では有意差が認められなかった。<BR>【考察】今回、各群に有意差が認められた第2内旋ROMに着目し特徴を挙げると、第2内旋ROMが十分であれば肩甲骨の移動距離は少ない群(A群)、中等度であれば肩甲骨の外転で代償する群(B群)、少なければ挙上で代償する群(C群)に分れることが示唆された。分類した指標を利用し結帯動作での筋、関節包などの肩関節構成体の制限因子を推測できるのではないかと考える。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0501-A0501, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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