片麻痺患者に対する立位リーチテストの再考

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抄録

【目的】<BR> 我々は,第38回日本理学療法学術大会にて,片麻痺患者に対して麻痺側下肢を一歩前に踏み出した肢位でのリーチテスト(前型リーチ)を考案し,functional reach test(FRT)と比較した結果,前型リーチはより歩行能力・歩行自立度を反映する可能性が高いことを報告した.しかし前型リーチ,FRT各々のリーチ距離と重心移動距離の関連性,これらが歩行能力へ及ぼす影響などが検討課題として残った.<BR> そこで今回我々は,片麻痺患者に対し前型リーチとFRTを行い,各々のリーチ距離・重心移動距離・麻痺側荷重量,さらに歩行能力への影響を比較検討し,前型リーチの有用性に関して再検証した.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は,片麻痺患者21名(男性14名,女性7名,平均年齢62.5±9.2歳),発症からの平均期間は52.6±48.8ヶ月であった.対象者のFIMの歩行項目は7点2名,6点16名,5点3名であった.<BR> 前型リーチは,重心動揺計上にて麻痺側下肢を一足長分前へ踏みだし,90°非麻痺側上肢を前方挙上した立位(非麻痺側の肩峰,大転子,外果が一直線)を開始肢位と定め,そこから前方への最大限にリーチを行い,移動距離をリーチ距離として記録した.FRTは,原法に従いリーチ距離を求めた.その際の重心移動距離および麻痺側荷重量は重心動揺計(アニマ社製グラビコーダーGS610)にて測定を行った.歩行能力は,10m歩行時間とtimed up and go test(TUG)を求めた.検討項目は,各リーチ距離と各リーチ動作時の重心移動距離および麻痺側荷重量の(1)測定値の再現性,(2)測定値と歩行能力の関連性(3) 10m歩行時間への各測定値の寄与率を求めた.統計処理にはSPSS統計を用い(1)の検討には級内相関係数,(2)の検討にはSpearmanの順位相関係数,(3)の検討には重回帰分析を用い,すべて有意水準5%にて検討を行った.<BR>【結果と考察】<BR> 各測定値の再現性は認められた.前型リーチ距離に関しては重心移動距離と麻痺側荷重量に中等度の相関が認められた.一方,FRTリーチ距離では重心移動距離と低い相関を認めたが,麻痺側荷重量とは相関を認めなかった.歩行能力との関連性は,前型リーチで高い相関が認められた.また10m歩行時間への各測定値の寄与率の検討に関しては,前型リーチではリーチ距離とその時の麻痺側荷重量の寄与率が高かったが,FRTにおいては各測定値の寄与率が低い結果となった.<BR> 片麻痺患者の歩行能力に関する帰結研究として,麻痺側筋力増強を伴った下肢支持性の向上,麻痺側荷重下での動的制御などが重要と報告されている.前型リーチは片麻痺患者の麻痺側下肢への重心移動や荷重量を反映し,かつ歩行能力に寄与する評価法として,FRTより臨床評価法として有用である可能性が高いと考えられた.<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), B0748-B0748, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566840064
  • NII論文ID
    130005013757
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.b0748.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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