BSC導入を利用したカイゼン活動
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- 渡邉 大樹
- 新潟県立新発田病院リハビリテーション科
抄録
【目的】戦略的マネージメントツールとして、主にビジネス分野において発展したBSC(Balanced Score Card)は、昨今の医療経済において注目され、導入されるようになった.特に地方自治体病院は財政健全化の意識が高まり、全国の自治体病院でBSCの導入が行われつつある.当新潟県も平成17年度よりBSCの試験的導入を経て、平成19年度には全県立病院に展開、本格運用を開始した.運用段階においては、スタッフのインセンティブの向上が見られず、平成20年度からインセンティブの向上を図る為、QCサークルを導入、BSCとカイゼン活動を組み合わせて運用、その試みについて報告する.<BR>【解説及び研究方法】BSCとは経営のバランスを上手くとることにより、組織のあるべき方向性を見極めるというトップダウン式の戦略ツールである.一方のカイゼン(改善)活動とは、主に生産・製造における品質管理の分野で発展したボトムアップ式の活動であり、カイゼン活動を行う為の技法とその小集団をQCサークルという.今回はBSCに示されたトップダウンによるミッションとビジョンのみを共有し、達成するためのカイゼン活動を小集団でコントロールする.基本ツールとしては、親和図法、SWOT分析、クロス分析を経て二次元展開法からBSCの作成.定期的な業績報告会を開催し、各小集団からカイゼン報告を行った.<BR>【結果】基本ツールを使用することにより、業務を可視化することによって表面化した問題点に具体的な行動計画を実行することができた.カイゼン効果としては、1.他領域のクリティカルパスへの介入件数の増加、2.算定漏れの減少、3.待機患者の減少と早期リハ介入の実現、4.各種研修会、勉強会の参加数の増大等が昨年度に比べ改善した.<BR>【考察】カイゼン活動は、問題解決が他人事では無く、問題は自分達で発見し解決しなくては良くならないことを意識付け、理解させる必要がある.意識付けの観点では小集団を作るQCサークルは、目標設定からコントロールまでを一貫して各小集団が行うことにより、問題解決と目標に対する責任感の向上を図ることに大きく寄与した.BSCはビジネスツールとしては一般的ではあるものの、その性質上、専門用語が多く難解であることや、計画ありきとなり業務改善につながったという実感が得られにくいということにより敬遠されがちである.カイゼン活動は自分達の身近な環境を良くすることで業務効率化、間接的に経営に参画しているという意識付けをすることにより、インセンティブが向上し、BSCの欠点を補う効果があると思われる.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), G3P1555-G3P1555, 2009
公益社団法人 日本理学療法士協会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566854784
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- NII論文ID
- 130004581464
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可