高度の斜め徴候を伴ったパーキンソン病の一症例

  • 玉虫 俊哉
    独立行政法人国立病院機構さいがた病院リハビリテーション科
  • 玉井 敦
    独立行政法人国立病院機構さいがた病院リハビリテーション科
  • 猪爪 陽子
    独立行政法人国立病院機構さいがた病院リハビリテーション科
  • 大日向 真理子
    独立行政法人国立病院機構さいがた病院リハビリテーション科
  • 川田 真司
    独立行政法人国立病院機構さいがた病院リハビリテーション科

Description

【はじめに】パーキンソン病(PD)の斜め徴候は臨床で比較的多く観察されるが、文献等の報告は少ない。今回、斜め徴候が進行し、姿勢保持・歩行困難を呈した症例を短期間集中的に理学療法(PT)する機会を得たので、本人の了解のもと、若干の考察を加え報告する。<BR>【症例】69歳、男性。現病歴:1985年(48歳)に歩行障害で発症。右への斜め徴候が出現。96年より現在まで当院でPT継続しているが、今回、右側屈増強し座位保持・歩行が困難となり、本人の改善に対する強い希望もあり2ヵ月間入院した。入院中の薬物変更なし。合併症:変形性腰椎症。<BR>【理学療法評価】Yahr Stage:4、FIM:106点、UPDRS:64点、ROM:正常範囲、MMT:体幹屈筋5、伸筋2、右下肢3、左下肢4、筋固縮:頸・体幹・下肢(右>左)。バランス反応:頸・体幹立ち直り減弱。姿勢:座位では頭部前方突出、体幹前傾・右側屈しつぶれている状態、右上肢で座面を支持し自己修正困難であった。立位でも体幹前傾・右側屈・下肢屈曲位(右>左)で体重負荷は右下肢優位であった。歩行:連続歩行約10m(独歩)。徐々に右側屈増強し最終的には膝を着く。すくみ足も認めた。食事場面では前腕で体幹を支持し、口を皿に近づけ右手スプーンで摂食していた。疼痛:右股関節痛(立位時)。<BR>【施行プログラム】1.固縮に対し筋の柔軟性を引き出すためストレッチング、2.筋力の左右差改善に対し体幹・下肢筋群の筋力増強、3.腹部の筋緊張を調整しながら立ち直り反応の促通、4.姿勢鏡を用いて対称姿勢の意識付け、以上を1日2回施行した。<BR>【経過】立ち直り反応を引き出す際に、随意的な動きで体幹筋は過緊張し目的の動きに抵抗が見られたため、最初は他動的に動かし動作感覚を入力し、徐々に随意的な動きを入れていった。退院時には随意的な動きを入れた中で抵抗なく誘導することが可能となった。FIMは変化なく、UPDRSは61点と姿勢項目で改善。MMTは右下肢4、左下肢5に向上。座位・立位で姿勢改善傾向が見られ、自己修正可能となった。下肢の体重負荷も均等になり、連続歩行も約40mに延長。右股関節痛も消失した。食事場面では肘支持だが口を近づけなくとも可能となった。<BR>【考察】斜め徴候は姿勢反射障害の一症状であるが、それには固縮など症状の左右差を一因とする説がある。PDの場合、固縮により姿勢保持筋として必要な筋出力の低下があり、立ち直り反応が出現しにくい環境にあるのではないかと考えた。また、固縮の左右差に加え、斜め徴候による側屈により筋力の左右差を生じ姿勢保持能力低下を引き起こしたと考えられた。今回、姿勢改善・歩行能力が向上した要因として、筋の柔軟性を引き出し筋力の左右差を軽減した上で立ち直り反応の促通を図ったからではないかと考える。今回の症例からは、PDの斜め徴候に対し立ち直り反応の促通とストレッチ、筋力増強練習を積極的に行う必要性を示した結果となった。<BR>

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566861696
  • NII Article ID
    130005013737
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.b0728.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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