咳嗽時の呼気筋(外腹斜筋・腹直筋)活動についての検討

DOI
  • 山科 吉弘
    若草第一病院 リハビリテーション科 畿央大学大学院 健康科学研究科
  • 中尾 有希
    若草第一病院 リハビリテーション科
  • 玉村 悠介
    わかくさ竜間リハビリテーション病院 理学療法課
  • 井出 宏
    畿央大学大学院 健康科学研究科
  • 増田 崇
    奈良県立五條病院 リハビリテーション室 畿央大学大学院 健康科学研究科
  • 田平 一行
    畿央大学大学院 健康科学研究科

抄録

【目的】咳嗽のメカニズムは4相に分かれており、第1相は咳の誘発、第2相は深い吸気の後、一瞬声門を閉じ、第3相で胸腔内圧を上げ、第4相では、早い呼気いわゆる爆発的呼気流速が生じるとされている.第3相~4相にかけて、呼気筋活動を必要とすると思われるが咳嗽時の筋活動についての報告は少なく明らかになっていない.そこで呼気筋である外腹斜筋と腹直筋において咳嗽への関与及び、姿勢における筋活動の変化を比較、検討することを目的とした.<BR><BR>【方法】対象は本研究の目的や方法等につき十分に説明し、承諾の得られた喫煙歴のない健常成人男性8名(年齢26.6±7.8歳、身長173.0±5.1cm、体重61.3±7.8Kg)とした.また呼吸・循環器に既往のあるものは除外した.各被験者に対して最大努力の随意的な咳嗽を行わせ,同時に呼気筋の筋活動を記録した.被験筋は両側の外腹斜筋、腹直筋とし、筋電図の測定と解析にはDKH社製Triasを用いた.姿勢は背臥位、側臥位、ギャッジアップ45度、端座位とした.測定姿勢はランダムに選択し、各姿勢で2回測定した.始めにMMT測定姿勢による最大随意収縮を行わせ、筋積分値(最大iEMG)を1秒間記録し正規化のための基準値とした.そして咳嗽時の筋活動を1秒間記録し、最大iEMGに対する百分率(以下%iEMG)として評価した.統計学的処理として、4姿勢での各筋の%iEMGを一元配置分散分析にて比較した.各姿勢での同側の外腹斜筋と腹直筋の%iEMGは対応のあるt検定にて比較した.各々の有意水準は5%未満とした.<BR><BR>【結果】咳嗽時の%iEMGはすべての姿勢において有意に腹直筋と比べ外腹斜筋が高かった(p<0.001).いずれの筋も姿勢の変化によって%iEMGの有意な変化は認めなかった.<BR><BR>【考察】腹筋群は主に呼気筋として働き、その走行から腹直筋は体幹屈曲作用を示し、外腹斜筋は胸壁の捻転作用を示す.腹筋群が収縮すると腹壁は内部に引き込まれ腹圧が上昇し,横隔膜を下から圧迫して胸腔内圧を上昇させるとしている.今回咳嗽時に外腹斜筋・腹直筋ともに活動していたことから,これらの運動学的な作用が明らかになったと思われる.しかし、腹直筋の咳嗽時%iEMGは外腹斜筋の約1/2程度であり、同じ呼気筋と分類されていても咳嗽時における作用は異なり,腹直筋の作用は少ないものと思われた.また両筋ともに全ての体位で有意な変化を認めなかったことから、姿勢の影響は少ないものと思われた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), D3P3493-D3P3493, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566886528
  • NII論文ID
    130004581152
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.d3p3493.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ