可撓性プラスチックキャストを用いた即席免荷装具の試み

DOI
  • 平山 史朗
    社会保険大牟田天領病院リハビリテーション部
  • 山﨑 裕子
    社会保険大牟田天領病院リハビリテーション部
  • 井手 昇
    社会保険大牟田天領病院リハビリテーション部
  • 宮本 忠司
    社会保険大牟田天領病院リハビリテーション部
  • 渡邉 英夫
    社会保険大牟田天領病院リハビリテーション部

抄録

【はじめに】我々は第42回本学術大会にて、プラスチックキャスト材であるソフトキャスト(スリーエムヘルスケア社)を用いた即席下肢装具の有用性を紹介した。ソフトキャストは水硬性の可撓性プラスチックであり、制御したい関節部に直接キャスティングすることで即席装具として使用できる。今回、足部の免荷を目的とした即席装具を工夫し、臨床で使用したので報告する。<BR>【症例紹介1】76歳、男性、急性心不全及び呼吸不全によりdeconditioning stateをきたし、リハビリテーション(以下、リハビリ)導入時には、既に四肢体幹の著明な拘縮と筋萎縮を認めた。何とか車椅子座位がとれるまでは回復したが、両足部の高度な足指屈曲変形と内反尖足変形の為、起立は不能であった。今回、変形した足指を免荷する為に足底全体で荷重できるように工夫した即席足指免荷装具を製作したところ、介助下での起立が可能となり、車椅子への移乗が楽になった。<BR>【症例紹介2】40歳、女性、高所より転落し、第1腰椎粉砕骨折、骨盤骨折及び両踵骨骨折を受傷し対麻痺を来たした。腰椎前方除圧固定術、仙骨後方除圧固定術、両踵骨経皮ピンニングを受け、術後約9週にリハビリ目的にて当院へ転院した。自宅退院に向けて、車椅子での生活を主体としたリハビリやセルフケアの指導を実施した。術後約12週に踵骨を免荷し、前足部で荷重できるように工夫した即席踵骨免荷装具を製作し、起立及び歩行訓練が可能となった。術後約20週で踵での荷重も可能となり、足関節制御の為にSaga plastic AFO を両側に製作し、片側ロフストランド杖での歩行が可能となった。<BR>【考察】従来より著明な足部の変形の為、起立、歩行訓練が困難な症例は少なくなかった。症例1のような変形に対しては矯正治療が重要視されがちであるが、ソフトキャストによる免荷用の即席装具を利用したことで残存能力が引き出され、身体能力の向上に効果的に作用した。今回、このような症例に対するリハビリの取り組み方を再考し、さらに即席装具の有用性を再認識できた。また、症例2では装具が必要な時にすぐに製作し、即日装着できたことで早期に起立、歩行訓練が実施できた。治療の好機を逸することなく病態が安定するまでの早期の装具として役立ち、業者による装具製作を最小限に抑えることができたことから、医療経済的な効果も認識できた。<BR> いずれの症例においても病態を把握し、ソフトキャストの特性を利用し工夫することで免荷装具としての機能を十分に果すことができ、臨床で活用することができた。<BR>【まとめ】・今回、ソフトキャストを用いた即席免荷装具を製作した。<BR>・病態に応じて足部の一部を免荷したり、荷重したりが可能であった。<BR>・即席免荷装具により早期に目的とした起立、歩行訓練ができた。<BR>・病態に応じた早期のリハビリ装具として役立ったことにより、医療経済的な効果も認識した。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), E1625-E1625, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566999424
  • NII論文ID
    130005016175
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.e1625.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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