地域高齢者における起居動作能力の加齢変化と歩行速度の関係
書誌事項
- タイトル別名
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- 藤原京スタディ予備調査から
説明
【緒言】高齢者の動作能力に関する報告は多数あり,起居動作能力は加齢にともない低下することが知られている.しかし,それらは動作の成就に主眼をおいた質的な評価によるものがほとんどである.また,歩行速度は高齢者の自立性を評価する上で重要な指標のひとつとされているが,起居動作能力との関係は明確ではない.本研究の目的は,地域社会で生活する高齢者の起居動作能力の加齢変化を横断的に検討すること,および起居動作能力と歩行速度の関係を検討することである.<BR>【対象と方法】奈良県内の地方都市に在住する65歳以上の高齢者を対象とした「健康関連QOLをアウトカムとした地域高齢者のコホ-ト研究(藤原京スタディ)」の予備調査に参加した者142名のうち,起居動作および歩行が可能であった137名(男性72名,女性65名)を対象とした.なお,すべての対象者から,文書にて予備調査に対する理解と協力の同意を得た.起居動作能力として,寝返り時間,起き上がり時間,床立ち上がり時間,5回連続椅子立ち上がり時間を測定した.歩行速度は,10m歩行時間を測定し算出した.測定はそれぞれ2回ずつ行い,その平均値を代表値として分析した.加齢変化の影響は,対象者を性別ごとに前期高齢者(男性30名,女性37名)と後期高齢者(男性42名,女性28名)に分類し,MannWhitney検定を用いて比較検討した.歩行速度との関係は,Pearsonの相関係数を性別ごとに算出し検討した.<BR>【結果と考察】その結果,寝返り時間は,男女とも後期高齢者(男性2.7sec,女性3.0sec)が前期高齢者(男性2.3sec,女性2.6sec)よりも有意に遅い値を示した(p<0.05).起き上がり時間は,男性では有意差がみられ後期高齢者(1.9sec)が前期高齢者(1.6sec)よりも遅い値を示した(p<0.05)が,女性では有意な差はなかった.床立ち上がり時間は男女とも後期高齢者(男性3.7sec,女性4.5sec)が前期高齢者(男性3.0sec,女性3.9sec)よりも有意に遅い値を示した(p<0.05).連続椅子立ち上がり時間は,男性では有意な差はなかったが,女性では有意差がみられ後期高齢者(8.0sec)が前期高齢者(6.9sec)よりも遅い値を示した(p<0.05).これらのことから,起居動作能力を量的に捉えた場合でも,加齢による影響が認められ,能力が低下することがわかった.歩行速度との関係では,男性女性ともすべての項目において有意な相関関係が認められ(p<0.01),相関係数は寝返りで男性:-0.54,女性:-0.59,起き上がりでは男性:-0.35,女性:-0.31,床立ち上がりでは男性:-0.45,女性:-0.61,椅子立ち上がりでは男性:-0.59,女性:-0.63であった.これらのことから,起居動作の遂行時間から歩行速度を予測できる可能性があることがわかった.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), E1185-E1185, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205567050112
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- NII論文ID
- 130005016140
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可