坐骨神経から分岐する筋枝の形態形成的特徴

Description

(緒言・方法)坐骨神経から分岐する筋枝の多様性については第41回日本理学療法学術大会で報告したが,さらに筋枝の線維解析を加えより興味深い所見を得ることが出来たので報告する.2003~2005年度にかけ,新潟大学医学部解剖学実習およびマクロ解剖夏期セミナーに使用された実習体29体46側について,筋枝の起始,走行,分布を詳細に観察し,さらに線維解析の手法により線維走行を調査した.<BR>(結果)大腿二頭筋短頭(CB)は,大腿屈筋群のうち唯一坐骨神経の総腓骨神経成分(F)から筋枝(R.CB)を受け,その筋枝の分岐部位は多様である.第1例では,大腿中央つまりCB起始部付近の高さで,Fの外側寄りの腹側から分岐する.分岐後R.CBは蛇行しながらCBと大腿二頭筋長頭(CL)の間を外側に向かって走行し,CBの外側縁から筋束に進入する.第2例では,坐骨結節の高さで,Fの外背側から分岐し,その後坐骨神経と伴走,さらにCB,CL間を外側に蛇行した後,CBの外側縁から筋束へ進入する.第3例では,梨状筋下孔の直下でFの内背側から分岐した後,Fの外側を走行し,次に坐骨神経の腹側を下行し,さらにCBの表面を蛇行してCBの外側縁から筋束へ進入する.<BR> 29体46側から剖出したR.CB60本の分岐様式を高さで比較し,6グループに分類した.各グループの分岐位置を重ね比較検討すると,近位から遠位へ向かい分岐位置が概ね内旋の位置関係を示す.これは,第3例のR.CBの走行経路とも一致する.さらに,第1例,第2例のR.CBを線維束に分けて解析すると,Fの表層を内旋走行していた.<BR> 坐骨神経の脛骨神経成分(T)からの筋枝は,大内転筋,半腱様筋,半膜様筋,CLを支配する.これらの筋枝の多くは同一筋へ数本の筋枝を持つこと,また共同幹を形成する.第1例はTからの筋枝を5本持ち,筋枝の分岐部位は,近位から遠位へ移行するに従い1本目はTの内側寄りの腹側から,2本目はTの内側,3本目は内背側,4本目は内腹側,5本目は内側から分岐する位置関係を示す.第2例は筋枝を4本持つ.1本目はTの内腹側から,2本目は内側,3本目は内背側,4本目は内側から分岐する.第3例の筋枝は3本で,すべてTの内側から分岐する.それぞれの症例中で,Tから分岐する筋枝の分岐位置を断面で重ねて比較すると第3例を除き,近位から遠位へ向かい概ね内旋の位置関係を示す.第3例におけるTからの筋枝を線維解析すると筋枝はTの表層を内旋走行していた.さらに,FとTも互いに内旋の位置関係を取りながら走行する形態も明らかとなった.<BR>(考察)ヒトの下肢は発生段階で内旋(ねじれ)する.坐骨神経のFからの筋枝R.CB,Tからの筋枝が,いずれも近位から遠位に向かって内旋走行する形態形成的特徴を有することは,ヒト下肢の発生段階におけるねじれを投影すると推測する.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567060992
  • NII Article ID
    130005013527
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.a0677.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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