硬式高校野球投手の腰痛が上肢に与える影響について

  • 青木 啓成
    長野県理学療法士会スポーツサポート部 相澤病院総合リハビリテーションセンター
  • 児玉 雄二
    長野県理学療法士会スポーツサポート部 上田市武石診療所
  • 長崎 寿夫
    長野県理学療法士会スポーツサポート部 北信総合病院リハビリテーション科
  • 小池 聴
    長野県理学療法士会スポーツサポート部 長野赤十字病院リハビリテーション科
  • 山岸 茂則
    長野県理学療法士会スポーツサポート部 飯山赤十字病院リハビリテーション科
  • 奥田 真央
    長野県理学療法士会スポーツサポート部 相澤病院総合リハビリテーションセンター

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  • 平成17年度高校野球メディカルチェック事業からの分析

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【目的】高校野球において腰痛を訴える選手は多い。そこで今回は投手の腰痛に着目し、その特徴と上肢、特に肩関節への連鎖的影響について検討することを目的とした。<BR>【対象】平成17年度長野県理学療法士会による高校野球メディカルチェック事業(以下メディカルチェック)に参加した投手31名(1年生10名・2年生21名、右投げ26名・左投げ5名、オーバースロー30名・アンダースロー1名)を分析対象とした。<BR>【方法】メディカルチェックにおいて調査した項目は、学年・打席側・投手歴・野球歴・障害歴・非合理的投球フォームの有無・ROM・MMT・柔軟性・アライメント・理学所見であった。腰痛群と非腰痛群間でこれらに差があるか分析を行った。また、投手全体の各関節可動域の平均±標準偏差を標準値として、腰痛群のタイプ化し、タイプごとの特徴を検討した。<BR>【結果】腰痛群は8名(慢性6名・急性2名)。投球フォームにおいてはフォロスルーに異常を認めたのは、非腰痛群の27.8%に対し腰痛群は62.5%で有意に多かった(P<0.05,Chi square test and Fisher's test)。その他の項目では有意差は認めなかった。腰痛群のタイプ化では、股関節可動域が標準値より減少し体幹可動域が標準値内である3名(以下、A群)と、股関節可動域が標準値より増大し体幹可動域が標準値より減少している5名(以下、B群)にわかれた。A群はB群に対し、投球側肩外旋可動域(第2肢位)で有意に減少し(P<0.01)加えて第3肢位でも減少していた(P<0.05)。反対に投球側肩内旋可動域(第2肢位)では有意に増大していた(P<0.05)。A群は非投球側の肩外旋可動域(第2・3肢位とも)も減少していた(P<0.05)。また前腕回内外可動域が投球側・非投球側ともに減少していた(P<0.05 Unpaired Student's t-test)。それ以外の調査項目では有意差を認めなかった。<BR>【考察】A群は股関節のみでなく外旋・回内外が有意に低下していたことから柔軟性が全体的に低下している傾向があり、結果的に体幹機能に代償が強くなり腰痛発症の可能性が推察される。原因としては連鎖的な2次的腰痛が考えられるため下肢のストレッチングの重要性が考えられた。また、B群は体幹機能が低下していることから発生する腰痛であり、他の関節代償で投球していることが伺える。結果的に代償は肩関節でも伺え、今後投球肩障害へ発展する可能性も否めない。加えて、肩内旋可動域が有意に低下するB群では腰痛群の投球動作の特徴としてfollowに問題が有意に高かったことが同phaseの牽引ストレス吸収不全を招来している可能性を否定できない。腰痛を有する投手の場合、腰痛指導のみでなく十分な肩関節周囲のコンディションチェック特に前方ストレスの増加や後方関節包拘縮といった点も十分に確認する必要性が示唆された。腰痛群には投球障害を有する選手があり、今後も症例数を増やし、関係を明確化していきたい。

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