スペシャルオリンピックスにおける健診事業の結果と理学療法士の課題

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抄録

【目的】<BR> スペシャルオリンピックス(以下,SO)は,知的発達障害児(者)を対象としたスポーツトレーニングおよび競技会や健診事業などの包括的な取り組みである.我々は,長野で開催された第8回SO冬季世界大会及び熊本で開催された第4回夏季ナショナルゲームの健診事業(ヘルシーアスリートプログラム,以下HAP)に理学療法士として参画した.そこで,今回は, HAPのうち我々が担当した足部の健康状態に関する健診事業であるフィットフィート(以下,FT)の結果を分析し,そこで明らかになった問題点に対する理学療法士の課題について検討したので報告する.<BR>【方法】<BR> HAP健診を受診したSO選手178名(男性125名,女性53名)を対象とした.平均年齢は男性20.9歳(10歳から39歳),女性21.5歳(9歳から43歳)であった.健診は,FT健診表に基づいて,1)爪(爪白癬,陥入爪・巻き爪の有無),2)皮膚(魚の目・胼胝・足白癬・潰瘍・蜂窩織炎の有無),3)足指変形(槌趾・短趾症・外反母趾・内転小趾・モルトン神経腫の有無),4)関節可動域(足関節・距骨下関節・中足指節関節の異常),5)足長・靴のサイズ,6)バイオメカニクス(過回内足・回外足・外転・内転・有痛性歩行・交差性歩行・凹足・扁平足・内転足の有無)について実施した.この健診事業は,本人,または,保護者の承諾に基づいて実施され,整形外科医1名,理学療法士11名が担当した.<BR>【結果】<BR> 両足健診(356足)の結果,9歳~43歳までの全対象者の問題点としては,1)陥入爪・巻き爪68.0%,2)扁平足57.0%,3)胼胝29.8%,4)爪白癬23.9%,5)足関節可動域異常20.5%の順であった.年齢別では,9歳~19歳までは,1)陥入爪・巻き爪66.1%,2)扁平足56.0%,3)胼胝28.0%,4)足関節可動域異常22.0%,5)爪白癬20.2%,20~29歳までは,1)陥入爪・巻き爪68.3%,2)扁平足65.5%,3)胼胝28.9%,4)爪白癬23.9%,5)足関節可動域異常18.3%,30歳以降では,1)陥入爪・巻き爪72.7%,2)胼胝40.9%,3)爪白癬38.6%,4)扁平足31.8%,5)足関節可動域異常22.7%,内転足22.7%の順に足部の問題が認められた.<BR>【考察】<BR> 年代によって発生頻度は異なるが,陥入爪・巻き爪などの爪の問題,扁平足や内転足などのアライメントの問題,胼胝や爪白癬などの皮膚の問題,関節可動域異常など可動性の問題が多く認められた.これらの結果から知的発達障害児(者)のスポーツ活動を理学療法士として支援していくためには,陥入爪・巻き爪などに対する爪のケア,扁平足や内転足に対する足底板などのアライメントの調整,胼胝や爪白癬などに対する皮膚のケア,そして,関節可動域異常に対する運動療法などについて,直接的に介入するとともに,家族や指導者に対するケアの方法についての詳細な指導を定期的に実施していくことが重要であると示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), C0570-C0570, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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