ラット膝関節運動負荷試験装置の試作(第2報)
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抄録
【目的】関節の不動により関節拘縮が発生し,これを予防するために関節可動域運動が有効であることは広く認知されている.しかし,その効果的な負荷条件についてのエビデンスはなく,セラピスト個人の経験に頼っているのが現状である。我々は,この関節拘縮の予防に対して有効な関節可動域運動負荷条件を実験動物を用いて模索している。今回,ラット膝関節の可動域測定,関節運動負荷を高い再現性のもとに正確に行うことが出来る試験装置を製作したので報告する。<BR><BR>【方法】本装置に求められる機能は,ラットの膝関節を一定の角速度で他動的に屈曲伸展運動を行うことで,前もって設定したトルク抵抗を感知した時点で屈曲伸展運動を停止し,反対方向への関節運動を行うものである。これらの条件を満たすため,本装置における他動的関節運動部は精密な運動制御と運動データの取得が可能となるよう構成した。本装置は本体部,駆動部,制御部の3部分から構成される。まず,本体部は軽量化,および腐食性に対応するためにアルミ部材で製作している。また,この本体は,台座部,体幹固定部,下腿取り付け用プレート部の3部分により構成されている。次に,駆動部は,屈曲伸展に伴う関節の抵抗力をリアルタイムセンシングするセンサ,およびそれに基づき精密な速度および位置変化を可能とするステッピングモータから構成されている。制御部は主に力や角度の時系列データを取得できるようパーソナルコンピュータを用いてシステムを構成した。ラットは右側臥位とし,大腿部は,骨盤後部と股関節上部の支持,大腿骨を貫通するキルシュナー鋼線を固定することによって支持された。下腿部は,下腿を貫通するキルシュナー鋼線と足関節部を下腿取り付けプレート部に固定することによって支持された。今回のラット膝関節屈曲伸展運動では,先行研究を参考にしてラットの膝関節にかかる負荷抵抗値が0.049Nmに達した時点で反転するような制御設定とした。これによりラット膝関節の屈曲,伸展運動を連続的に試行するものである。<BR><BR>【結果】麻酔下で本装置にラットを固定し,ラット膝関節部に屈曲伸展関節運動を連続的に負荷した。ラットの体幹および下腿の固定性は,本装置で十分に満足できるものであった。ゆえにラットの膝関節にかかる抵抗値が0.049Nmに達すると関節運動方向は反転し,スムーズな屈曲伸展運動を繰り返すことができた。<BR><BR>【考察】今回製作したラット膝関節運動負荷試験装置は,その屈曲伸展運動をリアルタイムセンシングしたことにより様々な制御が可能であり,その関節運動の制御が正確に安定して実行された。また,膝関節の関節可動域情報を記録できるため評価が容易であった。本装置を使うことで様々な関節運動負荷条件のもとで,すべてのラットに高い再現性の元に同条件の関節運動を負荷することが可能となった。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), C0558-C0558, 2008
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205567153152
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- NII論文ID
- 110006800115
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可