肩関節水平内転における肩関節周囲筋の筋活動

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【はじめに】whipple testは肩関節内転位での保持が可能であるか否かを評価することで腱板損傷の有無を診断するテストである。しかし、肩関節内転位を保持させた時の肩関節周囲筋の運動機能に関する報告は少ない。また、肩関節水平内転位を保持できないことで洗体動作などのADLに支障を来たす症例も多く経験する。そこで肩関節水平内転位保持に着目し、肩関節水平内転角度を増大させた時の肩関節周囲筋の運動機能を理解することを目的として筋電図学的分析を行ったので報告する。<BR>【対象と方法】対象は整形外科的、神経学的に問題のない健常者6名(平均年齢32.3±6.6歳)、両側12肢とした。対象者には事前に本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。測定筋は三角筋前部線維、中部線維、後部線維、棘下筋、広背筋、大胸筋中部線維、下部線維とした。筋電計はmyosystem 1200(Noraxon社製)を用いて測定した。測定肢位は座位とした。測定側の肩関節を90度屈曲させた肢位を基本肢位とした。基本肢位から30度、60度水平内転位に保持させたときの表面筋電図を測定した。測定時間は5秒間とし、3回実施し、平均値をもって個人のデータとした。基本肢位における筋積分値を基準とし、各水平内転角度における筋活動を筋電図積分値相対値(以下、相対値)として求めた。統計学的処理には各角度間にて対応のあるt検定を用い、有意水準を5%とした。<BR>【結果および考察】三角筋前部線維では60度にて30度と比較して有意(p<.05)に相対値が増大したが、中部線維と後部線維には有意差を認めなかった。後部線維と中部線維が肩関節水平内転に関与しなかった要因として後部線維と中部線維の活動を増加させないことで水平内転の動きを妨げないようにしていると考えられる。大胸筋上部線維と下部線維はともに60度にて30度と比較して有意に相対値が増大した(p<.01)。肩関節水平内転角度の増大によって三角筋前部線維とともに空間に上腕骨を保持させること、更に上腕骨を内転位に引き付ける作用が生じたと考えられる。また、棘下筋と広背筋において水平内転60度で30度と比較して有意に相対値が増大した(p<.05、p<.01)。Reddyらは健常者では肩関節屈曲において上腕骨頭を押し下げるベクトルを持つ筋が肩甲上腕関節の安定化には重要であると述べている。棘下筋と広背筋は下方ベクトルを有しており、肩関節水平内転における肩甲上腕関節の安定化に作用したと考えられる。<BR>【まとめ】肩関節水平内転角度が増大することにより三角筋前部線維、大胸筋上部線維、下部線維の筋活動が増加することで上腕骨を内転位で空間に保持させる。棘下筋、広背筋は肩甲上腕関節を安定させるために活動量は増加する。肩関節水平内転位の保持には内転位での空間保持と肩甲上腕関節を安定させる機能の両方を評価することが必要である。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), A0601-A0601, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567227520
  • NII論文ID
    130005013451
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.a0601.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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