立脚相における Double knee action の構成比較について
説明
【はじめに】変形性膝関節症の歩行分析は諸家により,様々な報告が成され臨床に応用されている。しかし,その多くが歩行動作を構成する身体機能に対しての部分的な対応であり,歩容そのものを指導すると言った対応についての報告は少ない。今回我々は,歩容指導につなげることを目的として,歩行形態そのものに着目し,特に歩行立脚相におけるDouble knee actionの構成要素を分析した結果,興味ある知見を得たので報告する。<BR>【対象】本研究について十分な説明を行い,同意を得られた膝に愁訴を持つ患者45名(男性6名,女性39名,平均年齢68.3±8.9歳)。疼痛スコアはVAS 36.0±23.8/100,FTA 177.1±5.7°。比較対象群は,健常者30名(男性15名,女性15名,平均年齢51.7±11.2歳)である。<BR><BR>【方法】自然歩行スピードにて,7m歩行路を3往復してもらい,その中央付近横幅4m範囲を矢状面より,30fpsの汎用デジタルビデオカメラ( VDR-D300, panasonic社製)を用い撮影。得られた画像をビデオにて分析,歩行速度,歩幅,1歩行周期における各立脚相の%割合を左右の下肢にて算出した。また,立脚相でのDouble knee actionをそれぞれ初期接地から膝が屈曲してゆく時間(屈曲-1),その後膝が伸展してゆく時間(伸展-1),再び膝が屈曲してゆく時間(屈曲-2)の3つに区分し,時間を算出,その相関を調べた。統計処理はt検定を用い(有意水準5%未満),両群間での比較検討を行った。<BR><BR>【結果】自由歩行速度と歩幅においては,疼痛群で1.30±0.18m/s,0.71±0.08m,健常群で1.43±0.15m/s,0.79±0.07m,両群間に有意な差を認めた(p<0.05)。1歩行周期における各立脚相の%割合については,両群ともに初期接地から荷重応答期にかけて約15%を占め,全体として立脚相の延長と遊脚相の短縮が認められた。Double knee actionの構成比較では,伸展-1と屈曲-2の運動の長さが有意に異なることが認められた(p<0.05)。また疼痛群に関して、伸展-1と屈曲-2に負の相関が認められた(r=0.748,p<0.05)。<BR><BR>【考察】膝痛患者の多くは、階段の昇りではなく、降りるときの疼痛を訴える。膝OA患者の疼痛発生機転の一つに荷重下でのメカニカルストレスの増大がある。バイオメカ二クスの観点から見ても、膝前方位での身体重心後方変位した状態での膝に加わる負担は大きい。今回の研究結果より、疼痛群は、立脚相の片脚支持期間中、かなり早い時期から膝の屈曲方向への運動に変換される傾向を示した。このことより立脚後期の、いわゆる、片脚支持期後期における空間上での身体の運動と、膝の運動様式との関係は膝痛と深く関連されることが予測され、今後、更なる検討の価値があると考える。<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), C0601-C0601, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205567265024
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- NII論文ID
- 130005015596
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可