成長期に急激な足関節の変形の増悪を呈した二分脊椎症児に対する装具の考案とその効果

DOI
  • 荒巻 ひとみ
    医療法人雪ノ聖母会聖マリア病院リハビリテーション室
  • 鶴崎 俊哉
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻
  • 有薗 秋徳
    有限会社長崎有薗義肢製作所
  • 安東 大輔
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻 安永脳神経外科リハビリテーション室
  • 松山 裕
    医療法人社団慶仁会川﨑病院リハビリテーション科

抄録

【はじめに】<BR> 二分脊椎症児の足部の変形は筋力不均衡や痙性などによって生じ,支持基底面を狭くし,充分な荷重を困難にする.これにより立位・歩行時のバランス不良,代償運動の増加等を招き,さらに変形が増悪するという悪循環を引き起こす.また,患児の成長に伴い急激に悪化することがある.本報告は,足部のアライメントに着目してオリジナルの短下肢装具(以下,AFO)を考案し,その効果について検討した.<BR><BR>【症例紹介】<BR> 症例は普通学校へ通う二分脊椎症の小学生女児で,乳児期から理学療法を開始し,両足シューホーン・ブレース装着にて独歩可能となった.就学後は年3回程度の理学療法を行っていたが,約2年前から両足の内反足および凹足変形が急激に進行したため,理学療法を隔週に変更した.しかし,足部変形の改善が見られず頻繁に転倒するようになったため,新たなAFOを処方された. <BR><BR>【装具の考案】<BR> 作製したAFOは革製で,足底が前足部と後足部に分かれており,内側凸になるように板バネを使って接合してある.この板バネをベルトで閉めることによって前足部の内反と凹足を矯正する.また,変形の強い左のAFOには支柱があり,ベルトで固定して足関節の内反の矯正を図った.<BR><BR>【効果判定の方法】<BR> 重心動揺計で開眼自然立位における重心動揺検査(60秒間)を行っている間の表面筋電図(以下,SEMG),重心動揺,VTRによる姿勢分析を裸足とAFO装着時で比較した.SEMGは両側の大殿筋(GMa),中殿筋(GMe),半腱様筋(ST),大腿直筋(RF)の4筋を被験筋とした. 60秒のデータのうち,立位が安定した開始1秒後から約30秒間のデータを約1秒間隔(1024サンプル)で取り出し,データ解析の対象とした.各区間のデータを,MATLAB Ver.6.5.1(Math Works 社製)を用いて離散ウェーブレット変換による周波数解析を行い,SEMGの総エネルギー密度(以下,TPw)を求め,有意水準5%にてt-検定を行った.<BR><BR>【結果】<BR> AFO装着前後でTPwを比較すると,4筋全てにおいてAFOの装着前後で有意差(p<0.01)が見られた.裸足では,全ての筋でTPwは有意に右下肢のほうが高く,著明な左右差が見られた.AFO装着後のTPwは,Gma・Gme・RFは裸足に比べ,有意に左で増加,右で減少しており,STは左右共に減少していた.重心動揺では総軌跡長が減少し,外周面積は半分以下になっていた.姿勢分析では,AFO装着時は内反足が矯正され,踵骨が床面に対して垂直になり,両下肢支持になり,骨盤の左回旋・右方偏位も軽減されていた.<BR><BR>【考察】<BR> 本装具の装着により,足部の変形が矯正されることで右下肢支持から両下肢支持になり,筋活動の不均衡が改善された.このことより,本装具が単に足部のアライメントを整え,荷重を可能にし,立位バランスの安定性を得るだけでなく,筋活動の不均衡という二分脊椎症の機能障害面に対してのアプローチとしての効果ももたらすのではないかと考えた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), E0726-E0726, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567273216
  • NII論文ID
    130005016074
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.e0726.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ