慢性閉塞性肺疾患患者の運動耐容能に関連する因子

DOI
  • 山田 朋希
    信州大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 畑 幸彦
    信州大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 唐澤 達典
    信州大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 藤本 圭作
    信州大学医学部保健学科 臨床技術科学専攻

抄録

【目的】慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)患者の除脂肪体重(以下,FFM)の増加は運動耐容能の増加と相関すると報告されている.今回,FFMを構成している骨・内臓器・骨格筋のうち骨格筋の量に着目して,運動耐用能との関連性を明らかにするために,全身および身体各部位(上肢・体幹・下肢)の筋肉率と,漸増シャトルウォーキングテスト(以下,ISWT)を調査・検討した.<BR>【対象】2008年5月から2008年11月の間に,COPDと診断され当院の呼吸器感染症内科外来に通院している患者のうち,本研究の内容を説明し同意を得られた19名を対象とした.内訳は男性18例,女性1例,測定時年齢は平均70.8±5.7歳,Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Diseaseによる重症度分類ではステージIが6例,ステージIIが8例,ステージIIIが4例,ステージIVが1例であった.<BR>【方法】評価項目として,年齢,Body Mass Index(以下,BMI),%FFM(体重あたりのFFM),握力(利き手),全身・上肢・体幹・下肢の筋肉率およびISWTについて測定した.なお,筋肉率は多電極多周波数インピーダンス法による体重体組成計(オムロン社製カラダスキャン HBF-355)を用いて測定した.<BR>ISWTとそれ以外の項目との間でスピアマン順位相関係数検定を行い,危険率0.05未満を有意差ありとした. <BR>【結果】ISWTは平均422.6±166.4m,BMIは平均21.8±2.6kg/m2,%FFMは平均77.3±6.2%,握力は平均34.2±5.4kg,全身の筋肉率は平均31.7±2.9%,上肢の筋肉率は平均37.2±3.8%,下肢の筋肉率は平均49.1±4.1%,体幹の筋肉率は平均28.1±2.2%だった.年齢(r=-0.62,p=0.01),%FFM(r=0.59,p=0.01),上肢の筋肉率(r=0.53,p=0.03)および体幹の筋肉率(r=0.57,p=0.02)で有意差を認めた.<BR>【考察】結果よりISWTに対して年齢,%FFM,上肢の筋肉率,および体幹の筋肉率が相関を示した.年齢に関しては加齢変化によるものと考えられた.%FFMに関してはFFMの増加は運動耐容能の増加と相関するというBaarendsらの報告と同様の結果だった.上肢・体幹の筋肉率に関しては,上肢・体幹の筋肉が多いことが呼吸筋疲労を防ぎ,肺胞低換気を引き起こしにくくしたためISWTの増加に繋がっているいのではないかと考えた.なおCOPDに対する運動療法の中で下肢によるトレーニングが強く推奨されているのに今回の調査で有意差を認めなかった理由については,今後さらに検討を要すると思われた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), D3P1511-D3P1511, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567434112
  • NII論文ID
    130004581054
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.d3p1511.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ