筋の質的機能向上を目的とした股関節回旋運動要素を取り入れた多関節運動連鎖系筋力トレーニング機器の開発

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抄録

【目的】<BR>下肢運動器疾患における筋力増強訓練の研究は,重錘やエラステックチューブを使用した単関節運動中心の量的側面重視のトレーニングに関する報告が多い.しかし,近年,下肢運動器疾患は多関節運動連鎖の破綻から生じるというパラダイムのもとに,新たなる運動療法戦略が求められている.その一つとして,我々は変形性股関節症患者を対象に神経生理学的アプローチ法の一つである固有受容器性神経筋促通法(PNF)を用いて多関節運動連鎖を重視した筋の質的機能向上トレーニングに関する研究を行ってきた(平成16-18年度科学研究費).PNFは重錘負荷トレーニングのような単一平面上の運動と異なり,対角線上で3次元の運動(らせん運動)要素から構成されるトレーニングであるため日常生活動作に近い筋収縮が得られると考えた.その結果,PNFを用いた多関節運動は単関節運動と比較し,歩行時における外転筋の筋電図高周波帯成分が有意に増大し歩容の改善が認められた.そして,筋の質的機能向上には,1.多関節運動に回旋運動が加えられること,2.足底から加えられる抵抗方向(擬似的床反力)が極めて重要であることが分かった.しかし,現状のレッグプレス等の機器は上記2点の要素が考慮されていない.そこで,本研究の目的は筋の質的機能向上を目的とした多関節運動連鎖系筋力トレーニング機器を開発し,そのトレーニング効果について検討することである.また,本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に沿ったものである.<BR>【開発内容】<BR>1.全体構成<BR>多関節運動機器のベースは油圧式のサーキットトレーニングマシン(KAWAI社製:レッグプレスYU-3005)を使用した.本研究では既製の足乗せ部分の上に新規に足部スライド機能と回転機能を付加したアルミ合金製の足部開閉板(77cm×32cm)を試作し取り付けることにした.運動の内容は座位にて脚伸展しながら,股関節の外転運動と内旋運動を同時に行うシステムである.<BR>2.足部開閉板のスライド機能の開発<BR>足部開閉板上に足乗せ部分(14cm×30cm)を2つ(右用,左用)作成し,脚伸展しながら股関節外転が行えるようリニアガイドを取り付けた.また,同部には抵抗バネ(開時100N,閉時30N)を取り付けた.さらに足乗せ部の急激な運動(最大外転時の抵抗バネの弾性力を考慮)を防止するためエアシリンダによる安全装置も付加した.<BR>3.回転運動要素の部分の開発<BR>足乗せ部分と足部開閉板との間には,アンギュラベアリングを取り付け,足乗せ部が自由に回転運動出来るようにした.これにより股関節の内旋運動が可能となる.<BR>【今後の予定】<BR>今後,本機器は臨床現場で実際に使用し,そのトレーニング効果の有効性について検討予定である.本研究の一部は平成20年度日本学術振興会科学研究費補助金「(基盤研究C)(課題番号19500467)」の採択を受けて実施したものである.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P3459-C3P3459, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567520256
  • NII論文ID
    130004580995
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p3459.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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