座位バランス評価システムの開発

説明

【はじめに】<BR> 高齢者の傷害の要因では約7割が転倒によるものであり、骨折によって寝たきりとなる重篤なケースも多い。転倒は、加齢による身体能力の低下と有意に関連があり、その予防には視覚・前庭器・体性感覚のフィードバックによる総合的なバランス能力の向上と、下肢の筋力向上が有効である。従来の体幹のバランスの評価では立位で重心動揺を測定するため他関節のフィードバックや計測中の転倒のリスクがあり、体幹の正確なバランス評価は困難であった。本研究の目的は、座位で安全にバランス能力を計測する装置を製作し、外乱に対する身体運動時の反応時間の遅れを定量的に評価するなど、新たな観点からバランス評価を行うことである。<BR>【座位バランス評価システム】<BR> 座面変動装置として6個のステッピングモータを使用し、リンク底部のスライドにより座面状態が変化することで、様々な条件化で計測することが可能である。各軸方向に±40度の可動性を持たせた。プラットフォーム上の4隅に各軸方向の力・各軸回りのモーメントを連続的かつリアルタイムでの計測が可能となる6軸力覚センサーを配置することで、圧力中心点(COP)を算出することが可能である。また、磁気式3次元位置装置として頭頂、第4~7頚椎間、第12胸椎~第5腰椎間の計3カ所にレシーバを取り付けてトランスミッタから脊椎の位置を受信出来るようにした。<BR>【対象及び方法】<BR> 対象は健常成人男性8名、女性3名の計11名で、平均年齢21歳(21~24)である。座位バランス計測システムの設定を傾斜角度±5度、計測時間25秒とし周波数を0.25Hzと0.5Hzの2通りで行い、COP軌跡から単位時間軌跡長、単位面積軌跡長、二乗平均の3項目と頭頂、第7頚椎、第12胸椎、第5腰椎の水平方向の変位による比較を算出した。計測時の姿勢の条件を上肢は胸部前面で腕組む、下肢は床面から離す、頭の位置を一定とするために前方の目印を見るの3点に注意して行った。<BR>【結果】<BR> 設定条件0.25Hzでは単位時間軌跡長18.5±2.9mm、単位面積軌跡長2.0±1.1mm、二乗平均10.1±2.8mmであった。0.5Hzでは単位時間軌跡長24.6±3.7mm、単位面積軌跡長1.7±0.7mm、二乗平均10.2±3.5mmであった。各脊椎の変位による比較では0.25Hzと0.5Hzに大きな差は認められなかった。<BR>【考察】<BR> 今回、開発した座位バランス評価システムは立位で計測するときの眩暈や膝折れなどのリスクを回避することが出来るため、計測時の転倒リスクを減少させる利点がある。また、実際に健常者を対象に計測を行い、COP軌跡から単位時間軌跡長、単位面積軌跡長、二乗平均、各脊椎の水平方向の変位を算出することが出来た。今後は、実際に臨床の場で様々な疾患に応用していきたい。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), C0265-C0265, 2007

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567537536
  • NII論文ID
    130005013903
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.c0265.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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