積雪でも外出可能な高齢者の身体能力レベルに関する検討

DOI
  • 杉原 敏道
    山形医療技術専門学校 理学療法学科 山形大学大学院 医学系研究科 医学専攻 神経機能統御学講座
  • 三島 誠一
    山形医療技術専門学校 理学療法学科
  • 長沼 誠
    山形医療技術専門学校 理学療法学科
  • 武田 貴好
    山形医療技術専門学校 理学療法学科
  • 舩山 貴子
    山形医療技術専門学校 理学療法学科
  • 田中 基隆
    山形医療技術専門学校 理学療法学科
  • 落合 悦子
    山形ロイヤル病院 リハビリテーション科
  • 高木 麻里子
    山形ロイヤル病院 リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • FRTを用いての検討

抄録

【目的】<BR> 冬期間における圧雪や凍結は高齢者を転倒にさらす脅威となる。本研究ではFunctional Reach Test(以下、FRT)を用いて、冬期間でも外出可能な高齢者の身体能力レベルについて検討した。<BR>【対象と方法】<BR> 日常生活に支障のない同意を得た健常高齢者85名を対象とした。運動障害や感覚障害ならびに認知症を有する者は対象から除外した。FRTに先立ち、後方質問法での冬期間の外出に関する聞き取り調査を実施した。聴取内容は他期間と比べた冬期間(12~2月)の外出頻度と、その際の介助ならびに転倒の有無とした。外出頻度とは寒さなどの影響を除き、積雪や凍結による転倒を懸念して外出を回避した、または外出を抑制したことに由来する外出頻度である。積雪による制約がなく安全に外出が可能であった場合は外出自立群、積雪や凍結による外出の回避あるいは外出頻度の抑制、冬期間のみ介助や監視を要した、外出時に転倒があったのいずれかの回答が得られた場合には外出自立困難群とし対象者を分類した。その後、各対象者にはFRTを実施した。FRTはDuncanらの方法に準じた。体幹の回旋は行わないこととし、最大リーチ下での肢位保持時間は5秒とした。記録はmm単位で行い、転倒がないように十分な配慮を行って測定を実施した。両群のFRTの比較には二標本t検定を用いた。また、両群を最適に分類することが可能か判別特性分析を用いてcut off値を求めた。<BR>【結果】<BR> 外出自立群(n=46)と外出自立困難群(n=39)のFRTは18.3±5.2cmおよび12.1±5.0cmで、外出自立群に比べて外出自立困難群で有意な低下が認められた(p<0.01)。判別特性分析を用いた検討では15.5cmを境として両群をおおむね判別することが可能であった(判別的中率76.2%・感度71.1%)。<BR>【考察】<BR> FRTを指標とした場合、外出自立群と外出自立困難群では明らかな身体能力レベルの差異があると考えられる。また判別特性分析では15.5cmを境として両群をおおむね大別することが可能であったことから、FRTから見た高齢者の冬期間でも外出可能な身体能力レベルはおおよそこの程度であると考えられる。しかし、外出自立困難群の中にはある一定の身体能力を有しているがために活動頻度に由来して転倒した者もいたと考えられる。また、判別特性分析の的中率や感度が十分とは言い難いことや、この検討が後ろ向きであることから、この結果を評価基準としてではなく参考材料として用いるのが妥当であると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), A0556-A0556, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567545472
  • NII論文ID
    130005013406
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.a0556.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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