Closed Loop Stimulation(CLS)心臓ペースメーカーを植込んだ患者に対して運動負荷を実施した経験
この論文をさがす
説明
【目的】洞機能不全などによって心臓ペースメーカーを植込んだ患者において、運動時などに心拍数が増加せず必要な心拍出量の増加が確保できないことがある。このような状況に対応するためレート応答型ペーシングが用いられるが、センサー情報として加速度センサーを用いているケースが多い。しかし、自転車エルゴメータを用いた運動負荷においては、体動が少ないため負荷量の増加に応じた心拍数の増加がみられないという短所がある。Closed Loop Stimulation(CLS)とは、心内のインピーダンスを測定することで心筋の収縮性をモニタし、患者の状況に合わせたレート応答型ペーシングを行うことができるといわれている。今回、一症例にCLSの有無において同一の運動負荷を実施する機会を得たので報告する。<BR>【方法】洞不全症候群によってCLS機能を有する心臓ペースメーカー(BIOTRONIK社Protos DR/CLS)を植込んだ71歳女性に同意を得て2度の心肺運動負荷試験(CPX)を実施した。CPXは自転車エルゴメータを用いた毎分5wattのランプ負荷で、同日の午前にDDD-CLSモード(以下、CLS)で、午後にDDD(R)モード(以下、DDD)で症候限界性に実施した。なお、2度目の実施の前には疲労が残っていないことを確認し実施した。<BR>【結果】終了理由はともに下肢疲労であった。最大負荷量はCLS65watt、DDD61watt、peak VO2はCLS15.7ml/kg/min、DDD14.5ml/kg/minと、わずかにCLSの方が高かった。心拍数は、ほぼ設定最小心拍数65ppmから、どちらもanaerobic threshold(AT)直前の心拍数80ppmまでゆるやかな変化であり、ATを超えるあたりから自己脈での上昇がみられ、終了時はともに110ppmであり顕著な差異はみられなかった。しかし、CLSの心拍数変化はVO2の変化と近似しておりDDDと比べ生理的な反応とみることもできた。<BR>【考察】上半身の動きの少ない自転車エルゴーメータを用いて運動負荷を実施したところ、心拍数においてCLS、DDDに顕著な差異はみられなかった。今回は心機能には問題のない症例であったが、低心機能でVO2の増加を心拍数に依存するような症例においてはCLSによる心拍数変化は好影響を与えるのかもしれない。今後、症例を重ねて検討したい。<BR>【まとめ】洞不全症候群によって心臓ペースメーカーを植込んだ一症例において、CLS、DDDの2つのモードでそれぞれ自転車エルゴメータを用いたCPXを実施した。最大運動負荷量はCLSのほうがわずかに高かった。AT以降の負荷量では、ともに自己脈となり最大心拍数に差はなかった。CLSでのAT以前の心拍数変化はVO2の変化と近似しておりDDDと比べ生理的な反応がみられた。
収録刊行物
-
- 理学療法学Supplement
-
理学療法学Supplement 2007 (0), D1701-D1701, 2008
公益社団法人 日本理学療法士協会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205567549440
-
- NII論文ID
- 110006801258
-
- NII書誌ID
- AN10146032
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可