心疾患患者における疾患別入院期身体活動量の検討

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抄録

【目的】<BR> 心疾患患者の入院期における身体活動量(Physical Activity: PA)はこれまでにその実態が報告され,その規定要因として上下肢筋力が関与することが示されている(井澤ら 2007).しかし疾患別の病態や重症度別での検討は少なく,PAの実態や上下肢筋力との関連については明らかにされていない.<BR> 本研究の目的は,疾患別での入院期PAの実態および各疾患別PAと上下肢筋力との関連を検討し,入院期から回復期へ移行する際のPAの初期指標ならびにPA向上のためのアプローチの方法について提示することにある. <BR>【方法】<BR> 対象は聖マリアンナ医科大学病院ハートセンターに入院後リハビリテーション部に依頼のあった連続388例中,病棟プログラム終了後,心リハ室に移行し,かつPA,握力,膝伸展筋力の測定および後述する各指標の調査が可能であった141例である.年齢,性別,BMI,基礎疾患は,診療記録より調査した.PAの測定にはスズケン社製ライフコーダを用い,睡眠,入浴を除く24時間の歩数を7日間連続測定し,その平均歩数を算出した.膝伸展筋力には,アニマ社製μ-tas F1を用い,両下肢で測定した最高値を体重で除した値(kgf/kg×100)の平均値(%)を用いた.握力は,Preston社製Jamarを用い,左右の最高値の平均値(kg)を算出した.解析には一元配置分散分析,Tukey検定,Pearsonの相関係数を用いた.統計学的有意差判定基準は5%未満とした.<BR>【結果】<BR> 疾患の内訳は心筋梗塞(MI)63例(男性43例 女性20例),心不全(HF)55例(男性39例 女性16例),心臓外科術後(CS) 23例(男性14例 女性9例)であった.各指標の平均値はMI,HF,CSの順に,年齢 66.4,66.2,65.9歳(F=0.01 p=0.99),BMI 23.1,21.6,22.4kg/m2(F=2.49,p=0.87),PA 4828.9,3665.7,3259.6歩(F=4.79 p=0.01),膝伸展筋力 55.7,49.1,45.8%(F=4.42 p=0.01),握力 32.4,29.7,27.1kg(F=3.18 p=0.04)であり,PA,膝伸展筋力,握力においてMIと他の2群との間に有意差を認めた.<BR> PAと他の因子との関連は膝伸展筋力との間にMI r=0.43 p=0.01,HF r=0.64 p=0.01,CS r=0.66 p=0.01の正相関を認めた.同様に握力との間にMI r=0.49 p=0.01,HF r=0.48 p=0.01,CS r=0.65 p=0.01の正相関を認めた.<BR>【考察】<BR> 入院期PAは各疾患で異なることから, 入院期から回復期にかけてPAの初期設定は疾患別に配慮すべきと考えられた.またPAと上下肢筋力との間には各疾患とも正相関を認めたことから,PA向上に対しては上下肢筋力の向上が一方策となりうる可能性がある. <BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), D1707-D1707, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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