投球動作におけるトップポジション肢位と水平過伸展に関する一考察

書誌事項

タイトル別名
  • 肩関節内旋位での側方挙上に着目して

この論文をさがす

説明

【目的】投球動作のcocking phaseにおけるトップポジションでは、肩関節内旋位を呈する場合と、外旋位を呈する場合がある。橋本は、ハイレベルな選手ではトップポジションで内旋位を呈していると述べている。しかし、臨床では、「過度の水平伸展」に起因する投球障害肩を有する症例において、トップポジションで内旋位を呈している場合も少なくない。このようにトップポジションに至る上肢の軌跡を分析することは、パフォーマンスのみならず、障害発生メカニズムの観点からも重要である。そこで今回は、take back動作を想定して、肩関節内旋位での側方挙上と水平伸展の関連因子について調査した。<BR>【方法】対象は肩関節に既往歴のない成人男性12名、22肩とした(年齢31.5±5.2歳)。調査項目は以下の2項目とした。(1) 2nd肢位での肩甲上腕関節内外旋角度(肩甲骨を固定した状態で計測)、(2)肩関節内旋位での側方挙上における水平伸展角度、並びに挙上角度(以下、内旋位挙上角度)、挙上時内旋角度、肩甲骨の前後傾斜角度。(2)に関しては、測定姿勢は立位とし、投球動作を想定して頭部を非測定側に回旋させ、肩関節内旋位を保持した状態で、肘を90度まで屈曲しながら側方挙上を行わせたときの各計測項目を測定した。なお、肩甲骨前後傾斜角度に関しては、スラントを用いて体表より計測し、安静時と挙上時の差を求めてその変化量を算出した(前傾方向を+)。統計処理にはピアソンの相関係数を用いて、水平伸展角度とその他の計測項目との関連について調査した。<BR>【結果】肩甲上腕関節内旋角度は49.8±13.3度、肩甲上腕関節外旋角度は85.0±8.9度、内旋位挙上角度は84.0±7.6度、挙上時内旋角度は44.4±9.6度、水平伸展角度は19.9±8.9度、肩甲骨の前後傾斜角度変化量は-0.8±8.3度であった。水平伸展角度と各調査項目との関連では、肩甲上腕関節内外旋角度とは有意な関連を示さなかったが、肩甲骨の前後傾斜角度変化量と正の相関(r=0.53,p<0.05)を、内旋位挙上角度とは負の相関(r=-0.58,p<0.01)を示した。<BR>【考察】肩関節の構造上、肩関節内旋位でトップの肢位を保持する場合、最大挙上角度が小さい症例では水平伸展しやすく、このような症例における過度の水平伸展を防ぐには挙上に伴い肩甲骨を後方傾斜方向に動かすことができるかが重要なポイントといえる。ハイレベルな選手はこのような肩甲帯の使い方ができていることが予測される。しかし、投球障害肩を有する症例では、トップポジションで肩関節内旋と過度の肩甲骨前傾がカップリングモーションとして起こりやすく、本実験結果は臨床での印象を裏づける結果であった。以上のことを踏まえると、肩甲帯の機能に応じて適切なtake back動作の軌跡は異なり、症例に応じた動作を作り上げていくことが重要と思われる。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), C0994-C0994, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ