外傷性頸髄損傷受傷後の経過日数によるASIA motor score 改善値の経時的変化

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【目的】当院では脊髄損傷Data Base System（以下SIC model system）の運用を2005年7月から開始し、脊髄損傷者200例の前方視的データが集積され、受傷後の機能変化の分析が可能となった。今回、頸髄損傷後の経過日数による運動機能回復の違いを明らかにするため、脊髄損傷者の運動機能のスコアである ASIA motor score(以下AMS)の改善値の推移を分析した。<BR>【対象】SIC model systemに登録された症例のうち、AMSの改善値が一期間でも算出できた外傷性頸髄損傷者で、ASIA impairment scale(以下AIS)がE以外の96名（平均年齢57.3±19.5歳、男性78名・女性18名）を対象とした。対象者は最終評価時のAISによりA・B・C・Dにそれぞれ分類した。内訳はAIS A:24名、B:8名、C:18名、D:46名であった。<BR>【方法】AMSは四肢key muscle（上肢C5～Th1、下肢L2～S1)のMMT総計である（満点100点）。SIC model systemの受傷後72時間、2・4・6週、3・6ヶ月、1年のデータから、分類したAISごとに、受傷後の各経過日数で得られたAMSの値が、次の調査時までにどれだけ改善したかを算出した。各期間で経過した日数が異なるため、得られたAMSの改善値を経過した日数で除し（例：受傷後2週→4週の場合、その期間のAMS改善値を経過日数の14で除す）、それぞれの期間の改善値を比較した。統計にはKruskal-Wallis検定の後、多重比較検定を用い、AISおよび経過日数間の有意差を検討した（p<0.05）。<BR>【結果】AMSの改善値の平均は、受傷後72時間→2週/2週→4週 /4週→6週/6週→3ヶ月/3ヶ月→6ヶ月/6ヶ月→1年の順にAIS Aで0.064/0.055/0.050/0.048/0.014/0.006、AIS Bで0.273/0.100/0.029/0.075/0.014/0.010、AIS Cで0.714/0.533/0.510/0.158/0.033/0.100、 AIS Dで0.998/0.655/0.383/0.192/0.067/0.038と推移していた。AIS Dにおいて、受傷後72時間→2週は、4週→6週以降の各期間と比較して、AMSが 有意に改善していた。またAIS AとCの間では4週→6週以前の各期間で、AIS AとDの間では検討した全期間にわたり、AMS改善値に有意差がみられた。<BR>【考察】AMSの改善値は全てのAIS分類において、受傷後経過とともに減少していく傾向であった。最終評価時のAISが歩行獲得を意味するDの対象では、特に受傷後急性期にAMSの大幅な改善が起こっているのに対し、麻痺が重度なAIS AあるいはBの対象では、受傷後急性期からAMSの改善は僅かしか起こらなかった。よって、AMSの改善値の推移から、外傷性頸髄損傷者の予後がある程度予測出来ると考えられる。今後さらに受傷後経過日数とAMS改善値の関連を明らかにし、予後予測の指標を作っていきたい。

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