端座位での骨盤挙上運動による内外腹斜筋へのアプローチが歩行中の中殿筋筋活動に与える影響

  • 大月 勇太
    錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術科
  • 今田 健
    錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術科

Description

【目的】<BR>安定した四肢の運動を行うためには体幹の安定性が重要である。歩行においても同様に安定した歩行のためには体幹筋の協調的な活動は不可欠である。臨床場面でも、体幹筋群に対するアプローチを行うことで歩行が安定する症例を経験することがある。体幹筋の筋活動を高める目的で骨盤挙上運動を行い、その実施前後の歩行時における内外腹斜筋群の活動を表面筋電図(以下、EMG)にて計測した。<BR>【方法】<BR>対象は健常男性2例であった。身体特性は年齢26.5±2.1歳、身長171.5±4.7cm、体重64.4±2.0kgであった。被検筋は両側内外腹斜筋、右側中殿筋とし、10mの自由歩行を行い歩行中のEMGを計測した。その後、端座位で両上肢を体幹の前面で交差し、右側骨盤の挙上運動を10回実施した後、再び10mの自由歩行時におけるEMGを計測した。10mの自由歩行の前には1分間の安静座位をとるようにした。筋活動の計測には、EMGシステムkm-818T(メディエリアサポート社)を用い、サンプリングレートは1kHzであった。電極はP-00-S(Medicontest社)を使用し、フットスイッチとしてFlexiForce(NITTA社)を右側足部の踵部及び母趾に貼付した。<BR>計測したデータは、整流処理した後、10mの自由歩行中の5歩行周期分の立脚相、遊脚相それぞれの平均筋電位量を加算平均した。次に運動実施前の値を100%とし実施後の平均変化率を算出した。<BR>【説明と同意】<BR>被検者には事前に研究の目的と方法について説明し、本研究に対する理解と協力の意思を確認した上で行った。<BR>【結果】<BR>骨盤挙上運動後の平均変化率は、右側内外腹斜筋の立脚相で115.2%、遊脚相では125.4%であった。左側内外腹斜筋は立脚相で99.1%、遊脚相では104.1%であった。また、右側中殿筋の平均変化率は立脚相で87.7%、遊脚相で79.6%と減少傾向を示した。<BR>【考察】<BR>運動後に右側内外腹斜筋は賦活化され、歩行時の立脚相、遊脚相ともに筋活動の増加傾向が認められた。同側中殿筋の筋活動は立脚相、遊脚相ともに減少傾向であった。歩行時の中殿筋は、ミッドスタンスにおける骨盤の遊脚側への落下を制御する遠心性活動と、ターミナルスタンス~プレスイングにおける股関節の相対的な外転に作用すると言われている。今回の検討では骨盤挙上運動が歩行時の内外腹斜筋群の筋活動を高め得ること、それに反して中殿筋の筋活動が減少したことから内外腹斜筋と中殿筋の関連を精査していく有用性が示唆された。臨床場面においては体幹筋群へのアプローチが動作時の下肢筋群へ影響及ぼすことも意識しながら行うことが肝要である。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>歩行時の筋活動に関する先行研究は、下肢筋に着目したものが大半で体幹筋に関するものやこれらの相互関係について述べた報告は少ない。局所のみにとらわれないアプローチの重要性を定量的に検討した報告である。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567731712
  • NII Article ID
    130004581664
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.a3o2035.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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