体重免荷式トレッドミル歩行による歩幅と筋活動量の変化について

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抄録

【目的】<BR>体重免荷式トレッドミル歩行(以下BWST)はCPG(Central Pattern Generator)を利用したトレーニングである.また歩行障害を有する患者に対し,下肢にかかる荷重量を制限しながら早期より歩行動作の反復練習を比較的安全に行うことができることなどから,その有用性が多く報告されている. BWSTの効果として歩容の改善や歩行速度,歩幅の増加などが報告されているが,BWST時の上方からの牽引が筋活動や歩容に対しどのような影響があるかに関してはあまり明確にされていない.大畑らは上方からの牽引は立脚初期から立脚中期には重心移動を促進し,立脚中期から立脚後期には抵抗的に働くとしている.しかし側方への影響に関する報告は見られない.そこで我々は、側方への影響を下肢筋活動および歩幅の観点から調査した.本研究では、BWST時の免荷量を変化させ,下肢の筋活動量と歩幅を測定し免荷量との関係について検討した.<BR>【方法】<BR>対象は神経学的及び整形外科的障害のない健常男性7名とした.対象者の平均年齢は26.3±5.5歳、身体特性は身長170.1±4.1cm,体重60.0±2.8kgであった.測定方法は可動式免荷装置(BIODEX社製アンウェイシステムBDX-UWS)を使用し,体幹と大腿部に取り付けたハーネスを吊りあげて免荷量を調節した。免荷量は全荷重(以下FWB),25%免荷,50%免荷の3条件に設定し,4km/hでの歩行をそれぞれ5分間行い,その時の歩幅および筋活動量を測定した。なお歩行前には,3km/hでのウォームアップ(3分間),歩行後にクールダウン(1分間)を行った.歩幅の測定にはゲイトトレーニングシステム2(BIODEX 社製BDX-GTM2)を使用し,5分間の歩行中全ての歩幅を左右それぞれ記録し,1歩行周期での平均歩幅を算出した.筋活動量の測定には,表面筋電計(NORAXON 社製 TELEMYO G2)を用い,歩行が安定した10歩行周期をサンプリング周波数1000Hzで取り込んだ.得られたデータは筋電図解析ソフト(NORAXON 社製MYORESEARCH XP)を用い,100msec毎の二乗平均平方根(以下RMS)により平滑化し,3秒間の各筋の最大等尺性収縮を100%として正規化し,%RMSEMGを算出した.なお測定筋は中殿筋,内側広筋,大内転筋,半膜様筋,腓腹筋内側頭とした.各条件での測定の間には,2分間の休憩を入れた.また3条件の測定順序はラテン方格法により均等に割りつけたうえで実施した.統計学的分析は,3条件間での各筋活動量および平均歩幅について対応のある一元配置分散分析を用い,有意な差があった場合に多重比較(Bonferroni)により検定を行った.有意水準は5%未満とした.<BR>【説明と同意】<BR>被検者には研究の趣旨を文書及び口頭にて十分に説明し,実験に参加する承諾に関して同意書に署名をいただいた. <BR>【結果】<BR>1歩行周期での平均歩幅は,FWBで59.1±1.4cm,25%免荷で58.7±1.5cm,50%免荷で61.2±1.7cmで25%免荷に比べ50%免荷において有意な増大がみられた(p<0.05).各筋の%RMSEMGにおいては,大内転筋、半膜様筋が免荷量の増加に伴い筋活動量も増大し,逆に中殿筋,内側広筋,腓腹筋内側頭においては,免荷量の増加により筋活動量は減少した.しかし,統計学的には有意な差は確認できなかった.<BR>【考察】<BR>本研究の結果より,免荷量の増加に伴い歩幅が増大する可能性が示唆された.その要因として上方への牽引力が左右への重心の動揺を軽減させたことにより,前方への重心の移動が行いやすくなり歩幅が増大したのではないかと考えられる.また筋活動量の結果から免荷量の増加によって大内転筋、半膜様筋に筋活動量が増加する傾向がみられた.その要因として,上方への牽引力は遊脚側の骨盤の下制を制限するため,その力は立脚側の股関節に対し外転モーメントとなり,股関節の内転作用のある筋の活動量が増加したのではないかと考えられる.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>本研究は,BWST時の歩幅と下肢筋活動量の変化について調査した.上方から牽引することで免荷量を調整するBWSTは、歩幅の増大や内転筋や内側ハムストリングスを効率的に働かせることにも有用な手段である可能性が示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), A3O2011-A3O2011, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567755776
  • NII論文ID
    130004581640
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.a3o2011.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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