腰方形筋の代償機能についての一考察
書誌事項
- タイトル別名
-
- ―腰痛患者を通しての検討―
説明
【はじめに】 <BR>整形外科外来において、ほぼ毎日というほど腰痛症の患者が理学療法を紹介され訪れてくる.腰痛と一言で言っても、その症状は様々で、痛みの場所、強さ、運動時または安静時痛など、ほとんどの訴えは、個々によって違っている.これまで腰痛患者に対し、それぞれの検査を行っていく中、主訴の症状とは別に、腰方形筋に圧痛を有する者が多いように感じられ、その治療とし体幹側屈や股関節屈曲運動を行うことで、主訴症状の緩和や消失することを経験した.そこで今回、体幹側屈にかかわっている腰方形筋と、股関節屈曲運動の主動作筋である腸腰筋の仕組みについて検討したので、若干の考察を加え報告する. <BR>【対象】今回の研究内容を説明し、同意を得た、腰方形筋に圧痛や違和感を訴えるもので、男性9人、女性16人計25人 平均年齢48.8±11.2歳とした.<BR>【方法】今回の方法は、股関節運動を行った後に、骨盤の動きに変化が生じるかということを中心に検討した.先に1)徒手筋力検査法の骨盤の引き上げ動作を背臥位で行い、その変化を足底部に定規をあて実測した(単位はmm).次に端座位にて股関節屈曲運動を行い、その前後での実測差を算出した.統計処理はt検定用い有意水準は5%未満とした.さらにその股関節屈曲運動前後での2)圧痛、違和感聴取 3)筋緊張を触診.4)骨盤の引き上げを聴取し、それらの変化比較も結果とした.<BR>【結果】1) 骨盤の引き上げの差は、右が4.9±4.9mmで左が3.9±3.8mmで、どちらとも股関節運動前よりも運動後が正の値を示す、有意差をつけた.2)圧痛、違和感は25人中20人が症状低下を示し3)筋緊張を触診では、25人中20人が低下した4)の被検者による骨盤の引き上げの変化聴取は、25人中17人が動きやすくなったと答えた.<BR>【考察】今回の研究では、骨盤の挙上運動を腰方形筋の動きとし、股関節屈曲運動を腸腰筋の動きとして捉えた.腸腰筋の運動を行った結果 腰方形筋の筋緊張は低下した.このことから腰方形筋は腸腰筋の代償を行うのではないかと示唆された.腰方形筋も腸腰筋も構造上、腰椎に着いていることから、相互の機能を補っているのではないかと考えた.今回は, 腰方形筋が自らの機能である骨盤の引き上げと、腸腰筋の機能である、腰椎の前湾をも行っていたため、筋緊張が亢進し圧痛出現となったのではないか.股関節運動により腸腰筋が働くことで、代償分の仕事量が軽減し、筋緊張低下 圧痛軽減にいたったのではないだろうか.今後さらに、逆の腸腰筋による腰方形筋の代償機能や脊柱起立筋との関係などの検討も必要になってくると考えている.
収録刊行物
-
- 理学療法学Supplement
-
理学療法学Supplement 2008 (0), C3P3411-C3P3411, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205567822208
-
- NII論文ID
- 130004580948
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可