トレッドミル運動が老化促進マウスに及ぼす影響について

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抄録

【目的】<BR>正常マウスに比べ、老化の進行が速く、平均寿命が約40%低下している老化促進マウス(senescence-accelerated mouse:SAM)を使用し、8週間トレッドミル運動を行い、壮・老年期の運動が身体にどのような影響を与えるのか、生化学的に検討した。<BR><BR>【方法】<BR>実験動物として、雄のSAMP1を計27匹使用した。先行研究より、老化に関連した骨格筋変化が起こる50週齢を老化が起こり始める基準とし、50週齢からトレッドミル走行を行った。トレッドミル運動は、13m/min、20分間を週6回、連続8週間行った。50週齢、58週齢、トレッドミル運動群(各9匹)の体重、心重量、血清を計測・採取し、加齢による変化また運動による影響を調べた。血清は、生体致死因子であるHMGB1(high mobility group box-1)をELISA法により測定した。本研究は鹿児島大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。<BR><BR>【結果】体重・心重量ともに各群に有意な差はみられなかった。しかし、心重量は50週齢(67.1mg/g body weight)に比べ58週齢(65.3 mg/g body weight)で減少傾向にあったが、トレッドミル運動群(70.5 mg/g body weight)と50・58週齢と比較し増加傾向にあった。また、血中のHMGB1濃度は、50週齢(7.3ng/ml)に比べ58週齢(9.2 ng/ml)で増加傾向にあったが、トレッドミル運動群(4.5 ng/ml)は50週齢・58週齢より低い値を示し、58週齢とはp=0.0044と有意に低い値を示した。<BR><BR>【考察】<BR>今回の結果より、老化すると心重量は減少する傾向にあるが、定期的な運動を行うことでその減少を抑制することができることが示唆された。また、炎症性サイトカインとして炎症や臓器障害を惹起することが判明しているHMGB1濃度がトレッドミル運動群の血中で有意に低い値を示したことは、運動により細胞死を抑制できる可能性が示唆される。このことは、高齢者の定期的な運動介入は、老化促進を予防できる可能性を秘めている。今後、運動強度、頻度などの設定の変化により、運動介入が壮・高齢者の身体にどのような影響を与えるのか見解を深めていきたい。<BR><BR>【まとめ】<BR>老化促進マウスを用いて、壮・高齢期の運動介入が身体にどのような影響を与えるのか、生体致死因子であるHMGB1を指標に検討した。その結果、トレッドミル運動群で非運動群よりも有意に低い値を示し、運動を行うことで老化促進を予防できる可能性が示唆された。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A1495-A1495, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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