肩関節位置覚と身体イメージによる位置認識能力の検討

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説明

【目的】<BR>肢体における正確な位置認識には、関節位置覚が重要な役割を担っており、また空間における身体位置の認識いわゆる身体イメージも関与していると考える。本研究の目的は、角度再現方法を用いた肩関節位置覚と身体イメージによる水平位置認識の測定を行い、上肢の位置認識能力について検討することとした。<BR>【方法】<BR>対象は健常成人18名(男性9名、女性9名、平均年齢23.8歳)、測定肢は右上肢とした。被験者には研究の趣旨を伝え同意を得た。<BR>運動課題は前腕中間・肘関節伸展位での肩関節自動外転運動とした。角度計測にはZebris運動解析システムを使用し、垂直線と肩峰・上腕骨外側上顆を結んだ線のなす角度(以下、外転角度)を測定した。尚、測定に際してマーカーを肩峰、上腕骨外側上顆、垂直・水平線設定のために設置したL定規に貼付した。<BR>1)角度再現方法での肩関節位置覚測定<BR> 測定は閉眼・座位にて行なった。初めに目標角度まで最小限の誘導にて外転させ、その位置を5秒間保持させた。いったん上肢を下垂し、5秒後に目標角度を再現させ、外転角度を測定した。目標角度は外転30°、60°、90°とし、被験者には目標角度の値を教示しなかった。測定は3つの目標角度を順不同に3回ずつ行った。<BR>2)身体イメージによる上肢水平位置(以下、水平イメージ)の測定<BR> 位置覚測定後に同条件で測定を行った。検者は口頭にて「水平と思う所まで上肢を挙げ、保持して下さい。」と指示した。検者は運動が前額面上で行われていることを確認し、被験者が上肢を水平と認識したところで外転位を保持させ、外転角度を測定した。測定は3回行った。<BR> 1)では目標角度と外転角度の差の絶対値、2)では90°と外転角度の差の絶対値をそれぞれ誤差とした。統計処理は各測定における3回の誤差の平均値を用い、各目標角度での誤差の比較については多重比較検定、目標角度90°と水平イメージの誤差の比較についてはt検定およびピアソンの相関係数を求めた。<BR>【結果】<BR>各目標角度における誤差は30°:8.0±3.1°、60°:5.4±3.4°、90°:3.0±1.4°であり、すべての目標角度間に有意差を認めた(p<0.01)。<BR>水平イメージの誤差は5.1±3.6°であり、目標角度90°と水平イメージとの間に有意差を認め(p<0.05)、両値に相関関係(r=0.22)は認めなかった。<BR>【考察】<BR>各目標角度において差を認めた要因として、外転角度の違いによる軟部組織の伸張度や筋張力の差異が考えられた。さらに、目標角度90°の誤差が小さくなる理由の検証のため水平イメージとの関係をみたが、相関関係は認めなかった。また水平イメージの誤差は大きいが、被験者ごとに真の水平とは異なる位置を水平と認識していた可能性があった。以上より、位置認識能力の測定において関節位置覚と身体イメージは区別して評価する必要が示唆された。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A1487-A1487, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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