上腕骨外側上顆炎に対する肩甲帯・体幹からの評価とアプローチ

説明

【はじめに】一般的に上腕骨外側上顆炎に対し保存療法が適応となるが、その治療コンセプトは患部である前腕のストレッチング、筋力増強、装具療法というものが主である。また、最近の文献には肘関節のモビライゼーションや手関節のマニピュレーションの効果の報告も散見するが、肩甲帯及び体幹からのアプローチをコンセプトにした報告は少ない。そこで、上腕骨外側上顆炎を呈している症例に対し、肩甲帯・体幹からの評価、及び治療を行い症状の改善が見られたのでここに報告する。<BR><BR>【対象】当院外来受診患者のうちに、他の部位に合併症がなく、本研究の趣旨に同意を得て、上腕骨外側上顆炎と診断された25例、25肘を対象とした。男性12名、女性13名で平均年齢は44.5歳だった。<BR><BR>【方法】1)肩甲帯の評価として、患側、健側に対して長谷川らの行なうHorizontal Flex Test(以下HFT)を行い健側、患側における可動域の左右差の有無を確認し、5度以上をもって左右差ありとした。<BR><BR>2)疼痛の評価としてグリップ動作を行なってもらい、その痛みを最大限に痛い状態を10としてまったく痛くない状態を0とするVisual Analog Scale変法(以下VAS)を行った。治療は肩甲骨のモビライゼーションとTrunk Rotation Stretch(以下TRS)を行い、再度グリップ動作を行いVASにて評価した。治療前、治療後のVASの変化をWilcoxsonの符号付順位検定を用いて危険率1%をもって有意とした。<BR><BR>【結果】1)HFTの結果は全例において患側に可動域制限があった。<BR><BR>2)VASの変化は治療前、治療後において有意な差が認められた。(P<0.01)<BR><BR>【考察】本研究では、健側、患側ともに肩関節に異常のない症例を対象としており、HFTの制限因子は筋性のものと考えられる。患側に制限があることが結果1)より認められ、肩甲骨周囲筋の過緊張と本疾患の疼痛に関連があることが示唆された。本疾患は肩甲帯からの過緊張が上腕を介して前腕に伝わり主に短橈側手根伸筋腱にストレスが加わることも症状の出現と関与があると考えられる。そこで、肩甲骨のモビライゼーションを施行し、三角筋、大円筋、小円筋、僧帽筋、小胸筋などの筋緊張の低下を促すことができた。また、肩甲帯、体幹のアプローチとしてTRSを行なうことでも疼痛の軽減が見られた。肩甲骨のモビライゼーション、TRSを行なうことで、肩甲骨周囲筋だけではなく、広背筋を介した胸腰筋膜も伸張を行なうことで、背部の筋緊張も低下すると考えられる。その結果により、上腕を介した筋連結により短橈側手根伸筋腱へのストレスが軽減し疼痛の低下・消失が期待できる。よって上腕骨外側上顆炎の治療に肩甲骨のモビライゼーション、TRSなどの肩甲帯・体幹からのアプローチは有効であると判断した。<BR><BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), C0900-C0900, 2007

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567896960
  • NII論文ID
    130005014015
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.c0900.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ