ギプス固定慢性痛症モデルラットにおける脊髄グリア細胞活性化の変化

  • 大道 美香
    愛知医科大学学際的痛みセンター痛み学研究部門 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 大道 裕介
    愛知医科大学学際的痛みセンター痛み学研究部門 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 大石 仁
    愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 櫻井 博紀
    愛知医科大学学際的痛みセンター痛み学研究部門
  • 森本 温子
    愛知医科大学学際的痛みセンター痛み学研究部門
  • 吉本 隆彦
    愛知医科大学学際的痛みセンター痛み学研究部門
  • 橋本 辰幸
    愛知医科大学学際的痛みセンター痛み学研究部門
  • 江口 国博
    愛知医科大学学際的痛みセンター痛み学研究部門
  • 山口 佳子
    愛知医科大学学際的痛みセンター痛み学研究部門
  • 中野 隆
    愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 熊澤 孝朗
    愛知医科大学学際的痛みセンター痛み学研究部門

説明

【はじめに】<BR>末梢の組織傷害が完全に治癒しているのもかかわらず、慢性的な痛みを呈する病態がある.この病態のメカニズムを解明するために、我々は2週間の片側下肢不動化(ギプス固定)による慢性痛症モデル動物を開発してきた(大道ら、2005).その結果、ギプス固定除去後から処置部を越えて両側の足底や尾部にまで拡がる長期的な痛み行動の亢進を示すことを報告してきた.また痛み行動の慢性期に局所麻酔薬を用いて固定側からの感覚入力を一時的に遮断しても非固定側の足底の痛み行動は残存することから、脊髄の可塑的変容が本モデルの痛み行動に関与している可能性が示唆された.そこで本研究は中枢神経系の可塑的変容機序の一つと考えられるグリア細胞の関与に着目し、免疫組織学的な検討を行い、痛み行動との関連について検討を行った.<BR>【方法】<BR>本研究は国際疼痛学会の倫理委員会が定めたガイドラインに準拠し、愛知医科大学動物実験委員会の承認のもと行った.ラット(SD系雄性、9-11週齢)を用いて、体幹から一側下肢をギプス固定により2週間不動化するギプス固定慢性痛症モデルを作製した.本モデルのギプス除去後より痛み行動の測定を行うとともにギプス除去後1日目、6週目、13週目において第4腰髄および第1仙髄、尾髄に対してミクログリアのマーカー:OX42及びアストロサイトのマーカー:GFAPを用いて脊髄グリア細胞の変化を免疫組織学的に検討した.<BR>【結果】<BR>本実験モデルにおいて、ギプス固定部局所より離れた同側の足底部の痛み行動が出現するギプス除去後1日目に、第4腰髄において脊髄後角にミクログリアの活性化細胞数および細胞総数の増加を示す所見が固定側に確認された.さらに固定側の足底部の痛み行動が極大を示し、非固定側の足底および尾部にまで拡大を示すギプス除去後6週目においては、第4腰髄の脊髄後角においてアストロサイトの活性化を示す所見が両側性に認められ、さらに尾髄ではミクログリアの活性化を示す所見が確認された.すべての痛み行動が極大期より減弱を示すギプス除去後13週目においては、これまでに活性化を示していた第4腰髄の両グリア細胞の活性化の所見は減弱傾向を示したが、尾髄においては両側性にアストロサイトの活性化の所見が確認された.<BR>【考察】<BR>本実験モデルにおける痛み行動の時間的・空間的変化と脊髄グリア細胞の変化の関連性を認めた.このことから本実験モデルの慢性的痛み行動出現における脊髄グリア細胞の可塑的変容が関与する可能性が示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A2S2023-A2S2023, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567950720
  • NII論文ID
    130004579850
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a2s2023.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ