脳卒中初発者と再発者において歩行自立度は自宅復帰率に影響を及ぼすか?

DOI
  • 風晴 俊之
    脳血管研究所 美原記念病院 リハビリテーション科
  • 菊地 豊
    脳血管研究所 美原記念病院 リハビリテーション科
  • 鈴木 純
    脳血管研究所 美原記念病院 リハビリテーション科
  • 本木 綾
    脳血管研究所 美原記念病院 リハビリテーション科
  • 常田 康司
    脳血管研究所 美原記念病院 リハビリテーション科
  • 藤本 幹雄
    脳血管研究所 美原記念病院 リハビリテーション科
  • 美原 盤
    脳血管研究所 美原記念病院 神経内科

抄録

【はじめに】<BR> 脳卒中初発者の予後や転帰などに関する調査・研究報告は多く見られるが、再発者に関して検討した報告は少ない。今回、当院回復期リハビリテーション病棟の退院者で、脳卒中初発者と再発者における、歩行自立度と自宅復帰率の関係について調査したので報告する。<BR>【対象・方法】<BR> 2004年4月から2006年9月の間に、当院回復期リハビリテーション病棟に入棟した全脳卒中患者677名のうち、明らかな麻痺を呈していない者、及び四肢麻痺、病前生活が自宅以外を除外した642名を対象とした。内訳は初発群が460名(男性257例、女性203例、67.9±12.1歳、右片麻痺246例、左片麻痺214例)、再発群202名(男性131例、女性71例、72.1±9.2歳、片麻痺が140例、両片麻痺62例)である。調査項目は退院時FIM、歩行自立度(屋外自立~不能の6段階)、転帰先(自宅~その他の4段階)とした。統計処理は6×4の分割表を作成し、初発群と再発群における転帰先と歩行自立度の関係についてカイ二乗独立性検定を行い、初発群と再発群の歩行自立者と転帰先の差については、6×2の分割表よりMann-Whitney検定を行った。初発群と再発群の年齢、退院時FIM得点の差はウェルチのT検定を用い、統計処理は全てSPSS11.0Jを使用した。<BR>【結果】<BR> 退院時FIMは初発群で91.0±32.4点、再発群で77.7±34.8点再発群が有意に低かった(p<0.001)。転帰先と歩行自立度との関係は、初発群でクラメールのV値が0.32(p<0.001)、再発群でクラメールのV値が0.35(p<0.001)と有意な関連性を示した。<BR> 自宅復帰例の年齢は初発群で66.2±12.0歳、再発群では70.8±8.8歳(p<0.001)と再発群で高かった。また、退院時FIMは初発群が101.2±24.1点、再発群が89.4±29.8点(p<0.001)、歩行自立度も再発群で低かった(P <0.001)。しかし、自宅復帰率は初発群で352名(76.5%)、再発群で148名(73.3%)と、初発・再発群間に自宅復帰率に差は認めなかった(p=0.44)。<BR>【考察・まとめ】<BR> 当院回復期リハビリテーション病棟における脳卒中初発者、再発者の自宅復帰率に明らかな差を認めなかった。両群間において転帰先と歩行自立度の間には関連性はみられたが、退院時FIM得点では有意に再発群が低値を示した。<BR> このことから、先行研究で示されるように自宅復帰率に歩行自立度が影響するものの、再発例では身体機能や能力等、患者個人に帰着する要因よりも、環境的な要素(介護力や地域性)が自宅復帰に影響を及ぼしていることが推察される。<BR> 再発例の予後・転帰先を検証する場合において、環境因子について検討することの必要性が示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), B0134-B0134, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567964800
  • NII論文ID
    130005013686
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.b0134.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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