DYJOC様運動練習が脳卒中片麻痺者の歩行・バランスに与える効果についての検討

説明

【緒言】整形外科疾患の理学療法では可動域や筋力の改善は極めて重要であり、運動の遂行をより円滑にするためにDYJOCトレーニングが取り入れられることもある。その運動練習理論は確立され、多くの基礎的なエビデンスの検証がなされてきているが、臨床的な効果、特に中枢神経疾患についての判断は十分とはいえない。そこで本研究では、脳卒中片麻痺者に対するDYJOC様運動練習が立位バランスや歩行にどのような効果をもたらすかを検証した。<BR>【対象】3人の脳卒中後慢性期の片麻痺者を対象とした。全員が独歩可能で、ADLは自立していた。実施にあたり文書および口頭での研究内容の説明の後、参加に同意を得た。<BR>【方法】実験デザインは第一基礎水準期、介入期、第二基礎水準期を設定したABA´型のシングルケースデザインとした。介入期にはDYJOC様運動練習として、バランスボードに麻痺側足部を載せ、前後に傾けるというバランス練習を10分間、週3回の頻度で4週間実施した。A・B・A´の期間は各4週間で、1週間に一度、各評価項目の測定を実施した。評価項目は10m 歩行スピード、Timed Up and Goテスト、静的重心動揺距離、クロステスト、麻痺側下肢支持能力とした。<BR>【結果】静的重心動揺距離およびクロステストに対するDYJOC様運動練習の影響はみられなかった。しかし、すべての被験者においてDYJOC様運動そのものの円滑性は増し、さらに3人中2人において麻痺側下肢の支持力が有意に向上していた。また全ての症例で10mの歩行所要時間が有意に減少していた。Timed up & go テストでは一人の症例は介入期にそのスピードが有意に向上し、他の2症例においても同様の傾向がみられた。<BR>【考察】被験者にはDYJOC様運動練習においてバランスボードに載せた麻痺側の足に体重を最大限に負荷させることを求めたが、これにより体重支持のための筋力や調整力が向上したものと考えられる。歩行は体重を支え、姿勢を整えながら移動する動作で、身体を支える筋力や姿勢を調節する動的なバランスを必要とする。DYJOC様運動練習により歩行能力の指標としてのスピードが有意に向上したことから、本運動練習は身体の総合的なパフォーマンス向上に有効であったと考えられる。そして包括的な動的バランスの指標となるTimed up & go テストにおいて一人の症例では介入期にそのスピードが有意に向上し、他の2症例においても同様な傾向がみられた。これらの結果からこのDYJOC様運動練習は立位におけるバランスの諸要素など、細かい個々の要因には反映されにくい包括的な歩行能力、バランス能力などに対して効果を発揮するのではないかと考えられる。しかし、それらの効果は主として介入期に現れ、その後の第2基礎水準期には低減したことよりその効果は比較的短期的なものであると考えられる。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), B0153-B0153, 2007

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567997952
  • NII論文ID
    130005013705
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.b0153.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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