化膿性椎間板炎を呈した症例に対する理学療法の一考察
説明
【はじめに】今回,腰椎椎間板ヘルニア,化膿性椎間板炎を呈した症例の理学療法を経験した.炎症反応沈静化後,椎間板性疼痛のみ残存した本症例に対し,レントゲン上,骨硬化が得られる前に体幹屈曲運動を行った結果,良好な知見を得たので報告する.<BR>【症例】31歳男性.1年前,L4/5腰椎椎間板ヘルニアと診断され,他院にてレーザー治療を受け,改善.今年に入り,激しい腰痛と右坐骨神経痛を認め,当院入院。入院時,両側SLR test,右側Kemp sign陽性で同日,椎間板内加圧注射療法(以下,注水)施行.注水2日後,症状軽快し,退院.翌朝から再び同様の腰痛が出現し,歩行困難となり当院再入院. 38度の発熱,WBC8840,CRP5.87と炎症所見を認め,MRI上,L4/5化膿性椎間板炎と診断された.<BR>【経過】治療はベッド上安静,抗生剤を開始した.しかし腰痛は改善せず,入院4日後WBC7550,CRP26.59と炎症反応の上昇を認め,緊急にL4/5LOVE変法髄核摘出術,椎間板内洗浄施行.炎症反応沈静化後,術後3週で理学療法開始.理学療法所見は安静時の腰痛はなく,体動にて増強.筋力はMMT4~5レベル,下肢神経症状,感覚障害はなし.起立板での立位練習より開始し,ダーメンコルセット装着にて歩行器歩行開始.歩行時の疼痛回避性側弯は残存していたが,炎症の再燃なく,術後6週で独歩可能.その後外泊練習を行うも,炎症反応は陰性化.筋力はほぼ改善したが,起居動作,歩行時のL4/5周囲の腰痛は残存していた.また,腰痛により臥位での両下肢伸展位挙上不能,体幹前屈制限を著明に認めたため,臥位での体幹屈曲運動を開始.前屈はFFD50cmまで可能となり,歩行時の疼痛回避性側弯も改善.腰痛軽減,起居動作,独歩安定し,入院後2ヶ月で退院.退院1週後より外来リハビリを開始し,前屈はFFD10cmまで可能となった.<BR>【考察】本症例は術後,下肢神経症状,筋力低下,感覚障害はほぼ消失したが,起居動作,歩行時のL4/5周囲の腰痛のみ残存した.臥位での両下肢伸展位挙上が不能で,体幹後屈は可能であったが,前屈は痛みによる制限が著明であった。歩行では疼痛回避性側弯を認めた.そこで炎症反応陰性化後,体幹屈曲運動を開始したところ,前屈が可能となり,歩行時の疼痛回避性側弯も改善することができた.これは,椎間関節の筋性制限(屈曲制限)の改善,腰椎後方要素の除圧によるモビライゼーション効果,腹部筋活動の改善が得られたためと考える.現在,腰痛に依存する体幹可動域制限,筋力低下は残存しており,動作,歩行の円滑さには欠けるが,今後のリハビリの継続に伴い改善してくると考える.本症例の理学療法を経験して,炎症反応の陰性化後に椎間板性疼痛のみ残存した症例に対しては,早期に体幹屈曲運動を促していくことも有効なアプローチとなり得る事が示唆された.<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2006 (0), C0977-C0977, 2007
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205568049024
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- NII論文ID
- 130005014092
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可