小学生における静的アライメントと動的アライメントの関連性について

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抄録

【はじめに】静的アライメントと動的アライメントには関連性があることがすでに明確である.しかし,これらの対象の多くは中高生や成人であり,小学生を対象とした報告は少ない.そこで今回は小学生を対象とした静的アライメントと動的アライメントとの関連性について検討を行った.<BR>【対象と方法】対象は保護者の同意が得られた小学校1~6年生132名264肢(男児65名130肢,女児67名134肢)とした.評価項目は,静的アライメントとしてQ-angle,膝蓋骨の向き(squinting patella,neutral,frog eye),O脚・X脚を,動的アライメントは片脚立位による動的Aテストを用いた.これらの評価にあたり,対象者のASIS,膝蓋骨中央部,脛骨粗面,内外果中央にシールを貼り,前額面での立位姿勢をデジタルカメラで撮影した.画像よりQ-angleを求め,膝蓋骨の向きを主観的に評価した.O脚・X脚は撮影時に判定した(顆間距離2横指以上).動的アライメントは,ASISと膝蓋骨中央部と内外果中央とのなす角度の補角を用い,片脚立位時(角度A)と膝関節30゜屈曲位(角度B)での角度の差(B-A)を求めた.正の値はKnee-in,負の値はKnee-outを表す.統計処理には,多重比較法(Tukey検定),t検定,分割表の検定を用いた.<BR>【結果】静的アライメントについては,Q-angleは男児16.0±6.6゜,女児20.8±7.2゜と女児の方が男児に比べ有意に大きかった(p<0.01).膝蓋骨の向きに関しては,neutralが52.7%と最も多く,次いでsquinting patellaが33.7%,frog eyeが13.6%であった.また,O脚・X脚は,O脚が11.3%,X脚が17.8%であった.squinting patellaを有している者はQ-angleの値が大きく(p<0.05),またO脚が多い(p<0.01)ことがわかった.動的アライメントについては男児0.65±4.51゜,女児は1.92±3.91゜で男女ともKnee-inしており,男児に比べ女児の方がKnee-inの程度が有意に大きかった(p<0.05).静的アライメントと動的アライメントとの関係については,squinting patellaがfrog eyeよりも有意にKnee-inの程度が大きかった(p<0.01)が,O脚・X脚ではKnee-inの程度に有意差はなく,Q-angleにおいても同様であった. <BR>【考察】結果から動的アライメントに直接影響を及ぼす因子は膝蓋骨の向きであり,Q-angleとO脚・X脚は直接的な関連性が低かった.Q-angleとO脚・X脚は前額面上での2次元的な評価であるのに対し,膝蓋骨の向きは下肢のねじれを3次元的にみた評価であるため,より動的アライメントと関連性が高かったと考える.しかし,膝蓋骨の向きにはQ-angleやO脚・X脚との関係があり,距骨下関節を介した下腿内外旋や足部回内外・扁平足などの因子との関係が推測され,Leg-heel angleやアーチ高率など足部形態に関わる因子を加えた検討の必要性を示唆している.したがって,動的アライメントの評価にあたっては下肢全体のアライメントとの関連性をより詳細に検討する必要がある.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), C0997-C0997, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205568071168
  • NII論文ID
    130005014112
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.c0997.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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